13年総選挙ではフン・セン首相率いる与党・カンボジア人民党が勝ったものの、想定外の野党の追い上げは与党に危機感を抱かせた。得票率は与党・人民党48.43%、最大野党・救国党44.46%。与党は国会の議席を大幅に減らした。そこでフン・セン首相は、諮問委員会を設置して最低賃金を毎年引き上げる仕組みをつくり出し、労働者層の取り込みを図ったといえる。また首相は、諮問委員会の答申に自らの一声で「上乗せ」をすることで、国民に存在感を印象づける戦略をたびたびとっている。
◆労働者層の取り込み
18年7月に総選挙を控え、フン・セン首相は最低賃金の上乗せだけでなく、自ら各地の工場を訪ね、労働者たちと懇談する活動を続けている。総選挙の前哨戦といわれた今年6月の地方選で、与党は野党の得票数を上回ったものの、やはり小差に追い詰められた。前回総選挙から5年が過ぎても続く与党離れに、与党の焦りは高まる一方だ。
そのため与党は、「最大野党の解党」に向けて強硬な手段をとり始めた。まず9月3日に救国党のケム・ソカー党首を「米国と共謀して国家反逆を企てた」として逮捕。今年2月に改正した政党法に基づき、最高裁に救国党の解党を申請した。これにより、救国党の消滅が現実味を帯びた。当局による逮捕を恐れた救国党議員たちは相次いで国外に逃れている。
続いて与党は、救国党が解党された場合、国民議会(定数123)にある救国党の55議席を他党に配分する法案を国民議会で可決した。現地紙によると、この法案ではフンシンペック党など5党が55議席を分けることになるが、この5党が前回総選挙で得た得票率は合計でもわずか6%余り。「救国党の議席を人民党が奪取しないのは、骨抜きの多党制を維持することが目的。これら5党が集まっても最大野党に匹敵する勢力とはいえない」との見方が強い。