新発債を購入した投資家が償還までそのまま持ち続けるとは限らず、途中で売ることも考えられます。そのような、発行市場ですでに発行された債券(既発債)を売買する市場が「流通市場」です。「セカンダリー市場」とも呼ばれます。
流通市場には「取引所取引」と「店頭取引」の二通りの取引方法があります。
「取引所取引」は、上場されている銘柄について、投資家からの売買注文を取引所に集中して取引を成立させようというものです。一方、「店頭取引」は、投資家が証券会社などの債券ディーラーと1対1で交渉して価格・数量・受け渡し方法などの条件を決め、取引を成立させます。「相対(あいたい)取引」ともいいます。
債券の売買はそのほとんどが店頭取引で占められています。債券には数万以上の銘柄があるうえに、個々の取引ごとに条件が異なり、複雑な取引も多くみられます。そのため、証券会社などが売買の相手方となって細かいニーズに応える店頭取引が多いのです。
今回は以上です。債券の輪郭をご理解いただけたのではないでしょうか。次回は、債券をより明確に理解するために、基本的な約束ごとなどについてご説明します。
(※マネー講座は随時更新。次回も「債券入門」をテーマに掲載します)
【プロフィル】瀬良礼子(せら・あやこ)
三井住友信託銀行マーケット企画部
マーケット・ストラテジスト
1996年より自己勘定の運用企画を担当。以後、現在にいたるまで、為替・金利を中心にマーケット分析に従事。マーケット企画部で手掛けた「投資家のためのマーケット予測ハンドブック(NHK出版)」、「60歳までに知っておきたい金融マーケットのしくみ(NHK出版)」の執筆スタッフの一人でもある。