今なお続くタイ・カンボジア国境封鎖 領土問題解決後も両軍にらみ合い (1/3ページ)

プレアビヒア寺院が建つ断崖絶壁のダンレック山地。眼下一帯はカンボジア領=タイ・シーサケート県
プレアビヒア寺院が建つ断崖絶壁のダンレック山地。眼下一帯はカンボジア領=タイ・シーサケート県【拡大】

 タイ東北部イサン地方。カンボジアと国境を接するシーサケート県南部の山岳地帯にタイの陸軍と治安警察が駐屯するエリアがある。ヒンドゥー寺院で知られるプレアビヒア寺院(タイ名:プラーサート・プラウィハーン)とその関連施設に通じる一帯だ。同寺院をめぐっては1世紀以上も前から領土問題が争われていたが、2013年に国際司法裁判所がカンボジア領とする判断を示し、法の上では決着がついた。にもかかわらず、今も国境は固く封鎖され、鉄条網や鉄柵を挟んで、タイ、カンボジア両軍が24時間体制でにらみ合いを続けている。

 後ろから兵士

 シーサケート県南部カンタララック郡からプレアビヒア寺院に通じる山道が始まる。道は急勾配で車のアクセルペダルはずっと踏んだままだ。30分ほど走ってようやく最終の駐車場に着く。そこから先は徒歩で岩山を進まねばならない。

 寺院はダンレック山地の三方が切り立った崖となった岩山の上に立つ。標高は約650メートル。崖の高さはいずれも500メートルを超す。タイ側からが唯一の自然の登山道となっており、カンボジア側からは容易に登れない。これが帰属問題を複雑にさせてきた。

 イサン地方の4月は真夏で日差しが強く、少し歩くだけで汗が噴き出てくる。どうにか岩肌を進むと、半分埋もれたトーチカのような建造物が見えてきた。中をのぞき込もうとしたとき、後ろから「誰だ」と声がした。現れたのは、上半身裸の陸軍兵士だった。非番らしく武器は持っていない。それでも眼光は鋭く、おびえながら取材に来た旨を告げると、表情を和らげ敷地内を案内してくれた。

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