今なお続くタイ・カンボジア国境封鎖 領土問題解決後も両軍にらみ合い (2/3ページ)

プレアビヒア寺院が建つ断崖絶壁のダンレック山地。眼下一帯はカンボジア領=タイ・シーサケート県
プレアビヒア寺院が建つ断崖絶壁のダンレック山地。眼下一帯はカンボジア領=タイ・シーサケート県【拡大】

 ソムという名のその兵士は階級章から伍長らしかった。東北部ナコーンラーチャシーマーの出身で、年齢は37歳。間もなく駐屯1年になるといい、訪ねたときは木を削って木製のやりを作っていた。「カンボジア軍と小競り合いはあるのか」と聞くと、笑って首を振る。両国友好のためには国境を開くべきではないかとも尋ねたが、それには一言も答えなかった。代わりに「あっちが治安警察の駐屯地だ」と教えてくれた。

 治安警察が受け持つ国境近くで見張り番をしていた若き隊員にも話を聞いた。23歳のトムで、やはり東北部のコーンケーン出身だ。ここに来て4カ月。任期満了までまだ8カ月もあると話していた。部隊では、若い隊員が炊事や清掃などの当番に就くという。「ここには菜園もありますから、野菜不足にはなりません。すっかり料理の腕も上がりましたよ。シャワーも雨水をタンクにためて、衛生には十分気をつけています」と説明してくれた。

 その青年隊員の表情が一瞬にして変わったのは、筆者が国境方面に向けてカメラを構え歩き出したときだった。「国境を越えたり、人物を写したりしてはいけません。カンボジア軍の兵士についても同様です」。軍事訓練で鍛えられた声には張りがあった。撮影後は一コマ一コマ確認を求められた。幸い、とがめだてられる写真はなかったが、もし消去を拒絶して身柄を拘束される事態にでもなったらと考えると、少し寒々しい思いがした。

 トムは、故郷に幼なじみの恋人がいると言った。赴任前の訓練もあり、会えなくなってもう半年になる。任期が終わったら婚約するという。治安警察に志願した理由については、「家が貧しかったから」とぽつり。軍や警察部隊にイサン出身者が多いことへの質問については笑って答えなかった。最後に、「プレアビヒア寺院は今でもタイ領だと思っているか」と尋ねてみた。少し間を置いてトムは言った。「もちろん、あの土地はわがタイ王国の土地だ。そう思ってこの任務に就いている」

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