米中貿易摩擦は9月末に米トランプ政権が「第3弾」の発効に踏み切り、中国も対抗措置を実施するなど抜き差しならない状況にあるが、足元の中国の輸出は依然高い伸びが続くなど、直接的に悪影響が表面化する事態には至っていない。
その一方、中国国内の企業マインドは製造業、サービス業を問わず悪化しており、先行きの悪影響を懸念する傾向を強めている。また、中国金融市場では、米中貿易摩擦の激化による企業業績の悪化を不安視して、年明け以降株価が下落基調を強めるなど、投資家心理が急速に悪化する動きもみられる。
株価下落と物価上昇
中国の家計資産は、高い経済成長を追い風にここ数年急拡大しており、既に日本を上回る規模になる半面、その背後で家計債務も大幅に拡大してきた。
こうした資産規模の急拡大をもたらした要因は、昨年以降の中国経済の持ち直しの動きと、それに呼応する形で株価が上昇基調を強めたことが影響している。ところが年明け以降における株価下落によって家計資産に対する「バランスシート調整圧力」が強まり、個人消費に対する下押し要因となっている。
さらに米中貿易摩擦をめぐっては、中国政府が米国からの穀物輸入に対して制裁関税を課しており、中国国内では飼料用穀物価格の高止まりを招いている。足元では豚肉などをはじめとする畜産品価格が上昇しており、インフレ率の上昇につながっている。
つまり、足元の中国の家計部門にとっては株価下落と物価上昇が「ダブルパンチ」となり、消費を圧迫している。