【ASEAN見聞録】マレートラの生息地、中国の“猫”需要が脅かす (2/4ページ)

27日、マレーシアの道路沿いにあるドリアン販売所。客が選んで購入すると、その場で中の果肉を出してくれる。当たり外れも楽しみのうち
27日、マレーシアの道路沿いにあるドリアン販売所。客が選んで購入すると、その場で中の果肉を出してくれる。当たり外れも楽しみのうち【拡大】

  • 27日、マレーシアの「忠誠ドリアン農園」では、ドリアンの実がなり始めていた。来年1月ごろに食べ頃となるという
  • 27日、マレーシアの道路沿いにあるドリアン販売所で売られていた、中部パハン州産の猫山王。果肉を食べるとタネが残る
  • 27日、マレーシアの道路沿いにあるドリアン販売所では、12品種が表示されていた

 対中輸出合戦

 昨年に中国が輸入したドリアンの約4割はタイからだった。だが、15年に中国で販売されたドリアンは、果肉400グラムあたり、タイ産が12元(約200円)だったのに対し、マレーシア産の山猫王は200元と16倍以上で、価格とブランド面で差を開けられている。タイの英字紙バンコク・ポスト(電子版)によると、マレーシアに近く生産に適したタイ深南部では、マレーシアに対抗し、来年に3000トンを高品質ドリアンとして対中輸出しようと、農家842軒の2万4216本を対象に、地方政府が音頭をとったプロジェクトが進行中だ。

 一方、ドリアンの「本場」を自認するマレーシアも、対中輸出に本腰を入れ始めた。国営ベルナマ通信によると、仲買業者のベホー・フレッシュは、中国の電子商取引最大手アリババグループと、冷凍ドリアンの中国輸出で覚書きを結んだ。現在は果肉やペーストに限定されているが、中国の規制緩和を受け、来年には冷凍して果実のまま輸出ができることになったため、輸出を後押しすると期待されている。

 ロイター通信などによると、マレーシアはこうした取り組みで、年間生産量3万トンの約5%(1万4600トン)に留まっているドリアンの輸出について、30年には今より5割増に引き上げる計画だ。昨年のドリアン農園の総面積は7万2000ヘクタール。同国では、資源価格高騰を受けてパーム油を生産するアブラヤシ農園が拡大してきた。だが、過去5年で値段が約4倍に高騰した猫山王ブームを受け、ドリアン栽培に転向する農家も増えているという。

環境悪化や値崩れも