この夏、遼寧省瀋陽市で友人の銀行口座開設手続きに同行した。身分証を機械でスキャンしてから顔写真を撮り、本人確認ができれば、その場でデビットカードが発行された。書類の記入がなければ、所要時間は5分もかからなかった。一部の地域では電子身分証を発行するパイロット実験も始まっている。
一方、プライバシー保護の問題をめぐっては世論が割れている。中国ネット検索大手、百度(バイドゥ)の創業者で最高経営責任者(CEO)の李彦宏氏は、昨年3月の中国発展ハイレベルフォーラムで、「中国人はオープンで、便利さを得るためにプライバシーを犠牲にしてもいい」と発言して波紋を呼んだ。中国社会の現実を「どうしようもない」と考えて李氏に同情する人と、プライバシーを重んじるべき大手IT企業トップの「失言」を批判する人との間で論争が起きた。
最近では授業中の学生の様子や授業への集中度合いを顔認証技術を使って判断していることに対し、教育現場での顔認証技術導入を称賛する人と、それに反対する人とが激しく対立した。