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「現金志向が強いから」ではない…日本でキャッシュレス決済が広がらない根本原因 (2/3ページ)

 ■複数の電子マネーを統合する仕組みはある

 日本でキャッシュレスが進展しないもう1つの理由として、さまざまな電子マネーが乱立していて使いにくいことがある。

 ところで、複数の電子マネーを統合する仕組みは、すでに存在する。それは、「UPI(統合決済インターフェース)」という仕組みだ。日本でもすでに利用可能になっているグーグルペイは、UPIを用いているアプリである。

 グーグルペイは、楽天EdyやSuicaなどと同列の電子マネーの1つではなく、これらの電子マネーを使いやすくするための仕組みである。

 日本でグーグルペイのアプリをダウンロードすると、楽天Edy、nanaco、WAON、Suica、QUICペイなどが使えるのだ。

 多くの電子マネーは、その電子マネーの口座に入金した残高がないと使えない。しかしグーグルペイの仕組みを使えば、クレジットカードから簡単に入金できる。どのクレジットカードを使えるかは電子マネーによって違うが、楽天Edy、Suicaなら、日本で発行されているほとんどのカードが使える。

 しかも、支払いには、スマートフォンをかざすだけでよい。共通のQRコードができたのと同じ効果が得られる。

 UPIは、グーグルが開発したものではなく、インド決済公社が開発した仕組みだ。

 インド政府は高額紙幣を廃止する一方で、UPIのシステムを開発したのである。2016年4月にサービスが始まった。

 その特徴は、異なる銀行口座からの利用を可能にしている点だ。そのため、UPIの仕組みを使うと、スマートフォンだけで複数の電子マネーを使うことができるのだ。

 現在インドには、45もの電子マネーが存在するが、これらがばらばらにならず、連携して使うことができる。協議会を作ったり、統一QRコードを作るのもよいが、UPIの活用も、もっと考えられるべき課題ではないだろうか?

 ■三菱UFJグループが「仮想通貨」から「電子マネー」へ方向転換した

 新しい決済手段に関するMUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)の取り組みが最初に報道されたのは、2016年だった。

 それ以降の動きを、改めて説明しよう。同年2月1日の『朝日新聞』が、MUFGが独自の仮想通貨「MUFGコインを開発中」と1面トップで報道した。

 これは、ブロックチェーン技術を用いる通貨で、2017年に発行予定とされていた。

 銀行自らが取引所を開設し、同行に口座を持たない人も利用できる。送金や買い物の支払いにも使え、手数料はゼロに近い水準まで下げられるというので、マネーの世界に革命的な変化をもたらすものとして実用化が待たれていた。

 MUFG社内での実証実験が2018年から進められ、2019年度中に発行の予定とされていた。ところが、2019年末に方向転換があったようだ。

 MUFGは、2019年12月にリクルートホールディングスと共同で新会社の設立契約を締結した。『日本経済新聞』の報道によると、MUFGはデジタル通貨「coin」(通称MUFGコイン)を当初は2017年度にも実用化する計画だったが、利用者の本人確認の徹底など銀行法が求める要件と利便性を両立できないという問題があった。

 このため、単独での展開は難しいとみて戦略を転換したのだという。この記事は、「将来はブロックチェーン(分散型台帳)を使って大量の決済情報を高速でやりとりする仕組みにする計画」としている。逆に言えば、「coin」はブロックチェーンを用いないもの、つまり数多くあるQRコード決済の電子マネーと同じものだということになる。

 これは、大変大きな方向転換だ。銀行法との折り合いが難しいというのはそのとおりだろう。

 しかし、それだけでは、利用先をリクルートに限定する理由は、依然として分からない。

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