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衛星携帯の世代交代、ソフトバンクなど参戦で一気に加速か

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衛星携帯の世代交代、ソフトバンクなど参戦で一気に加速か

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 災害時の緊急連絡用に欠かせない衛星携帯電話の世代交代が一挙に進みそうだ。通信大手3社が相次ぎ新サービスを提供、新たな利用者層の開拓に乗り出したからだ。

 従来サービスの端末価格は20万~30万円前後と高価だが、新サービスは8万~9万円と大幅に低価格化。サイズも小型で通信料金も安い新サービスが相次いで日本でも利用可能になり、公共機関を中心に導入機運が高まっている。

 ソフトバンクモバイルは来春、同社で初めての衛星携帯電話サービスを開始することを明らかにした。アラブ首長国連邦(UAE)の通信衛星を利用した衛星携帯電話事業者「スラーヤ」の回線を借りて国内向けに現行より大幅に割安な料金体系でサービスを提供する。総務省の免許交付を待ち来年1~2月にも開始したい考えだ。

 スラーヤの衛星携帯電話は中東や欧州、アフリカなどを中心に利用されており、08年からアジアもほぼ全域をカバーしている。通常の携帯電話並みの小型端末で、海外で一般的な携帯電話規格「GSM」と併用できるのも特徴。ソフトバンクが国内販売する米アップルのスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」用に、衛星携帯電話として使えるキットも海外では商品化されている。

 また、NTTドコモは英インマルサットの衛星携帯電話サービス「アイサットフォン・プロ」を13日に始めた。すでに提供している独自仕様の「ワイドスターII」に比べて、端末価格も通信料金も3分の1前後と安い。KDDIも21日からアイサットフォン・プロの提供を始める。「(既存サービスの)『イリジウム』だけでは競争力がない」(同社幹部)からだ。

 一方、衛星通信サービス会社の日本デジコム(東京都中央区)は、アイサットフォン・プロとスラーヤの両方のサービスをユーザーニーズに合わせて拡販していく方針だ。

 衛星携帯電話は、地上の通信設備を使わず、地上1000~3万6000キロメートルの通信衛星を介して通話やデータ通信を行うため、災害に強いのが特徴。2000年前後からサービスが始まり、国内でもワイドスターIIやイリジウム、インマルサットの「BGAN(ビーギャン)」が提供されている。しかし、契約件数は合計7万件程度にとどまっている。

 東日本大震災後、被災地の自治体や消防署などが数千台規模の衛星携帯電話を使用。公共団体や企業などで災害対策・事業存続のために衛星携帯電話の有用性が再認識されている。(芳賀由明)

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