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中台PC、日本攻略に手応え 法人需要切り込み、デザインで若者狙う

ニュースカテゴリ:企業のメーカー

中台PC、日本攻略に手応え 法人需要切り込み、デザインで若者狙う

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国内パソコン市場のメーカー別シェア  世界の“主役”に駆け上がった中国や台湾のパソコンメーカーが、日本市場でのビジネス拡大を狙っている。中国レノボ・グループや台湾エイスースは、手ごろな価格と個性的なデザインで世界の販売ランキング上位の常連だが、日本市場では思うようにシェアが伸ばせていない。

 米マイクロソフトの新しい基本ソフト(OS)「ウィンドウズ8」を搭載した新製品の発売を契機に、個人向け市場を掘り起こす一方、日本勢が守りの要に位置付けている「法人需要」にも切り込み、存在感を見せつける構えだ。

 世界シェアで上位も

 「レノボは日本で、市場全体の成長率を上回るスピードで成長してきた」

 ウィンドウズ8発売を目前に控えた10月18日。東京都内のホテルで開いた新製品発表会で、レノボ日本法人の渡辺朱美社長は、日本市場攻略の手応えを強調した。

 米調査会社ガートナーの調査によると、レノボは2012年7~9月期に、世界シェアが前年同期比2.6ポイント増の15.7%となり、米ヒューレット・パッカード(HP)を抜き、首位に躍り出た。同じ調査では、4位にエイサー、5位にエイスースと台湾勢が顔を出す。それとは対照的に、トップ5に日本勢の姿はなかった。

 しかし、日本市場では、中台勢は世界で認められた実力を発揮できていない。IDCジャパンによると、12年7~9月期の国内パソコン市場は、首位のNECレノボグループ(27.2%)を除き、富士通(18.7%)、東芝(11.9%)と日本勢が上位を占める。エイサー、エイスースの苦戦が浮き彫りになる。

 個人向け市場ではマーケティング力の差も歴然だ。家電量販店の店頭を歩くと、日系がブランドごとに商品棚を占有しているのに対し、外資系はひとまとめにされていることが多い。

 それでも、中台勢は「目の肥えた消費者が多い日本市場で成功できれば、世界のどこでも成功できる」と、日本市場攻略を重要課題に位置付ける。反撃ののろしは「中台など外資系にとって特に厳しい」(業界関係者)とされる法人向けビジネスで、すでに上がっている。

 大学生協に突破口

 具体的には、レノボは国内トップのNECと組み、法人向けの厚い壁をぶち破った。両社は昨年7月、国内パソコン事業を統合。レノボはNECにサポート業務を全面委託するなど効率化を図っているほか、全国7カ所の店舗展開により、認知度アップに取り組む。

 また、エイスースは10年にようやく法人向けの営業チームを立ち上げ、まずは地方大学の生活協同組合というニッチ市場で突破口をつかんだ。現在わずか6人の少数精鋭だが、昨年には北海道や東北、四国、九州の大学生協と契約にこぎつけた。

 関係者は「外資系では初めてではないか」と驚きの声が上がっているという。生協では主に、新入生が勉強や趣味で使うための標準機を販売する。

 法人向けのシェアはまだわずかだが、同社の営業責任者は「大学生協は1回入り込めれば、長く続けられるビジネス」と、成長に期待を込める。

 生協に食い込めた要因について、同社の商品が「若者世代に支持されていること」があるとみている。同社の商品力を支えているのは、「デザイン・シンキング(思考するデザイン)」(ジョニー・シー会長)と呼ばれるデザインと技術の融合だ。

 エイスースが2001年に台北市にある本社ビルに設置した「デザインセンター」には、同社の強さの秘密が詰まっている。厳重に管理された扉の中には、ふかふかのグレーのソファや豊富なデザイン系書籍が並ぶ。

 欧米やアジアなど多くの国・地域からやってきた約200人のエンジニアが、「リラックスでき、社員の発想力を磨く」(同社)ために設けられた空間。顧客の声をすぐに商品開発に反映する「知的生産工場」の役割を果たしている。

 エイスースが米ニューヨークで10月にお披露目した、ウィンドウズ8搭載の超軽量ノートパソコン「ASUS TAICHI(エイスース タイチ)」は、天板の両面に液晶パネルがある、斬新なデザインが強みだ。日本には年内に投入する見通しで、個人向け市場での同社の実力が試される。

 ある日系メーカー関係者は「まだ(中台勢の)知名度は高くないが、新しいもの好きの日本人の目を引く個性的な品ぞろえで強みを発揮するだろう」と中台勢の反撃に対する警戒を強めている。(米沢文)

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