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NTT「つなぐ技術」で“命の小道” 希少動物の絶滅防ぐ

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NTT「つなぐ技術」で“命の小道” 希少動物の絶滅防ぐ

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NTT東日本などが参画するアニマルパスウェイ=山梨県北杜市(同社提供)  NTT東日本が山梨県などで実施している「アニマルパスウェイ」。単純だが、ユニークな生態系保護の取り組みだ。道路や鉄道によって2つに分断された森林に、高さ7メートル前後の橋(通路)をかけ、小動物が双方の森を行き来できるようにする。

 動物が車や列車にはねられる「ロードキル」を防げるうえ、森林をまたいだ食糧確保や交配も従来通り可能になり、絶滅危惧(きぐ)種の保護にもつながる。長年、電信柱や電線の敷設工事を担ってきたNTTグループの「つなぐ技術」を随所に生かした環境貢献活動だ。

 アニマルパスウェイ事業はNTT東日本、大成建設、清水建設、動物保護グループなどが参画する任意団体「アニマルパスウェイ研究会」(山梨県北杜市)が実施している。現在、パスウェイは国内に3機設置されているが、1号機となったのは同市清里での県道建設で森林が分断されたケースだ。

 清里の森にはニホンリス、ヒメネズミ、モモンガなどの樹上生活動物に加え、国の天然記念物で環境省レッドリスト準絶滅危惧種にも指定されているヤマネ(体長6~8センチ)が生息。ヤマネは10月から4月ごろまで冬眠するが、森林が分断されれば食糧確保が困難になるうえ、繁殖機会も減り、絶滅の縁に立たされかねない。

 ヤマネ保護のためには「細分化された森と森を自由に往来でき、昔の一つの森と同じような環境にすることが必須だった」(NTT東日本山梨の小林春美CSR推進室長)。そこでパスウェイ構想が持ち上がった。

 地元のヤマネ保護グループらの提唱で、パスウェイの原型となる「ヤマネブリッジ」が設置されたのは1998年。ただ、当時の橋は総工費が2000万円と高額なうえ、雪害や雷雨にも弱く、リスなど小動物の利用はほとんど確認されていなかった。

 こうした“弱点”を克服しつつ、設置コストも抑え、全国的な普及につなげたい-。研究会で議論を重ねた結果、基本構造を改め、2本の電柱(支柱)をメッシュの橋でつなぎ三角形の屋根を取り付けるシンプルな形に単純化。建設費は200万円程度と大きく低減した。

 樹木からパスウェイへ誘導するための通路を取り付けたほか、橋上に猛禽(もうきん)類から身を隠すためのポケットを設けたり、滑り止めを付けたりとさまざまな工夫を凝らした。電柱の表面を樹皮で覆い、登りやすさにも配慮した。

 NTT東は、支柱や誘導路の設置を担当。パスウェイに設置したカメラで行う小動物のモニタリング(映像監視)でも、通信設備への落雷回避などの技術を提供している。

 パスウェイの保守点検や移設、ワイヤ交換も担当し、作業時には電線工事用の特殊車両や専門技術を持った作業員を派遣。通信事業者としての特性を生かした貢献を行っている。

 パスウェイは2007年に清里の1号機が、10年には同所に2号機が完成した。昨秋には栃木県の「那須平成の森」内の県道に3号機を設置した。現在も長野県、愛知県などで計画が進行中だ。

 電柱と電線で全国的な通信網を構築してきたNTTグループ。日頃の企業活動の最大の資産である「つなぐ技術」をアニマルパスウェイに応用し、「今後とも全国的に広げていく」(小林室長)方針だ。(渡部一実)

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