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東レ“企画提案型”で繊維稼ぐ ユニクロ協業成功で他社にもアピール
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東レの凍結業績 国内だけでなく欧米や中国の景気減速で合成繊維各社が苦戦する中、東レが稼ぎ頭に復活させた繊維事業の深化に力を注いでいる。
ユニクロをはじめとするアパレル(衣料品)メーカーなどとの提携戦略が功を奏し、糸や生地を衣料品などの最終製品に仕上げて供給する縫製品事業が伸長。縫製品の2015年度の売上高を当初目標の3000億円から3400億円に上積みするなど、収益を支える柱となった。繊維全体の業績は国内外の需要減少で足踏みを余儀なくされているが、20年をめどとする繊維事業の売上高1兆円の大台乗せに向け、着実に歩を進めている。
「環境への負荷を抑える社会的な要請に応えるため、再生可能なバイオマス由来の素材を開発し、繊維やフィルム用などとして事業化を加速している」
東京ビッグサイト(東京都江東区)で13日始まった環境関連製品の展示会で、東レのブース担当者は先端素材の意義を強調。ユニクロと共同で開発した保温性に優れる高機能衣類「ヒートテック」も出品し、環境への貢献をアピールした。
東レは近年、生地や糸などの原材料を提供する従来型の繊維事業のビジネスモデルから、アパレルや流通企業とのコラボレーションで縫製品までを手掛ける企画提案型へのシフトを強化。糸から衣料品までの一貫生産態勢を整えたことで「製品の企画力とともに、コスト競争力が増した」(繊維事業本部長の田中英造副社長)という。
さらに「暖かな素材」やバイオマス由来など、省資源・エネルギーにつながる素材を開発、製品化する「グリーンイノベーション事業」に取り組み、売上高の拡大につなげている。
コラボの代表例は「ヒートテック」だ。発売10年目となる今秋冬の販売目標は前シーズン比で3割増の1億3000万枚。乳児用を新たに商品化したほか、衣服内の湿気を吸収して放出する「吸放湿」機能を採用。最近の冷え込みにも後押しされ、今シーズンも「飛ぶように売れている」(日覚昭広社長)という。
ユニクロのように消費者とじかに接するSPA(製造小売り)との提携は、副産物をもたらす。開発や生産の現場にニーズを反映しやすくなり、商品開発力を高める原動力となった。
日覚社長は「ユニクロとの協業が成功したことで『東レに頼めば要求を満たしてくれる』と他のSPAやアパレルメーカーからも共同開発の声が掛かるようになった」とも打ち明ける。
例えば、スポーツ用品販売のアルペンに涼感肌着や保温肌着を供給。要求レベルの高いスポーツ用品メーカーとの提携も増やし、伸縮性や防水性、吸水性を徹底的に追求。今夏のロンドン五輪では各社に競泳用水着の素材を提供した。培ったノウハウは、一般衣料の素材開発にもフィードバックしている。
繊維事業は12年3月期の連結決算で売上高が約6400億円と業界で断トツ。営業利益も453億円と全社ベースの4割強を占め、テレビ需要の低迷で苦戦する液晶パネル関連などの「情報通信材料」を逆転し、8期ぶりに稼ぎ頭に返り咲いた。11年3月期に2393億円だった縫製品の売上高は、14年3月期に目標より2年前倒しで3000億円を達成できる見込みだ。
また、社内横断プロジェクトのグリーンイノベーション製品の売上高は全社で20年に1兆円の目標を掲げ、このうち繊維関連で1300億円の確保を目指す。
中国など低コストを武器にする新興勢力に押され、2002年3月期には単体決算が営業赤字に転落。脱繊維を目指すライバルから「やせ我慢」と皮肉られながらも、東レはナイロン、ポリエステル、アクリルの三大合成繊維を事業の軸に据え、研究・開発を続けてきた。その成果は、炭素繊維などの新事業を育てる源泉にもなった。炭素繊維複合材料は航空機向けに需要が拡大し、次世代電気自動車(EV)の車体用としても有望だ。
東レの繊維事業に死角はないのか。縫製品の生産拠点は中国に偏っており、人件費高騰が重くのしかかっている。バングラデシュやベトナムなどの工場の生産量を増やし、中国での生産比率を現在の72%から16年3月期には50~60%に縮小する方針だが、コスト対策が後手に回れば競争力低下は避けられない。
さらに中国や韓国、台湾の企業も高機能繊維を手がけるなど、追い上げも激しくなっている。目標達成とともに、今後も繊維事業で収益を稼ぐには「現状に満足せず、常に海外勢の半歩、一歩先を行く技術革新が求められる」(繊維業界担当アナリスト)ことは間違いない。(藤原章裕、豊田真由美)