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「ものづくり大国」今後は大丈夫か? 内職に頼る不安

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「ものづくり大国」今後は大丈夫か? 内職に頼る不安

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【ビジネスアイコラム】

 円高修正によって、自動車メーカーの業績が急速に好転している。1ドル=100円前後の水準が続けば、2014年3月期に最高益を更新する企業が増えそうだ。

 08年秋のリーマン・ショックによる需要激減以来、自動車メーカー各社は徹底的に原価を削ってきた。その過程で、下請けには相当な負担がかかった。

 大企業である一次下請けクラスは何とかなる。値引きはたしかにきついが、自動車メーカーのグローバル展開によって数量が増えるなら、結果オーライだ。問題は、独力で海外に出られない二次下請け以下の企業である。

 もちろん下請けも、自分の仕入れ先に負担を転嫁することを考える。だが、発注元から材料を支給されていたりして、それができない会社もある。そういう場合、真っ先に人件費を削ることになる。

 そこでこの数年、自動車産業の一大集積地である東海地方の下請けで増えたのが、「内職」への発注である。工場周辺に住む主婦などに部品の加工を委ねるわけだ。地元の人材派遣会社社長によれば「人材派遣を使うより、外国人技能実習生を雇うほうがずっと安い。さらに安上がりなのが内職に出すこと」。

 人を雇えば最低賃金などの縛りがあるが、内職に頼めば事業者同士の取引なので値切りに値切れる。こうすれば、時給換算で200円台という破格の手間賃で人が使えるケースもあるという。

 根っこを内職に頼っていて、ものづくり大国の今後は大丈夫かと不安になる。何しろ、働くのは完全な素人だ。愛知の自動車部品メーカーで購買担当をしている知人は「マスクなしで有機溶剤を使って作業している内職さんもいる」という。際限ないコストダウンの終着点は、そんな仕事場になりかねない。

 ドライな電機業界に比べ、自動車業界には下請けとの共存共栄を図るという気風が強かった。それでも、最近はそうした余裕が乏しくなっている。

 先進国の自動車市場がすっかり成熟し、価格競争の厳しい新興国市場に活路を見いださざるを得ないからだ。

 また、自動車メーカーは一様に部品の共通化を全社的に進めており、新たに設計される部品にはグローバルな比較で最安値であることが求められている。国内の下請けへの値下げ圧力が緩むことはない。

 中国での賃金上昇を受け、いまや人件費のベンチマークはベトナムへ移った。いずれはバングラデシュやミャンマーへ変わっていくはずだ。

 この流れのもとで現状の下請けピラミッドをそのまま維持すれば、内職に依存するような企業をさらに増殖させることになりかねない。それでは技能は伝承されず、長期的には競争力を保てまい。

 下請けを付加価値の高いものづくりへ誘導してこそ、良質な「現場」を日本に残すことが可能になる。環境の改善で余裕が生まれている今こそ、持続的発展への道筋をつけてほしい。(「週刊東洋経済」副編集長 西村豪太)

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