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次元を変える「ソニーな人」 20年先の未来を見通す力

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次元を変える「ソニーな人」 20年先の未来を見通す力

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【ビジネスアイコラム】

 東京・用賀の●研究所で、ISVC技術で処理された映像に驚いた。250型巨大スクリーンに上高地(長野県)が映し出されたが、遠景の山の稜線(りょうせん)や山肌がくっきりと見える。

 画面中央に映る川には雪解け水がごうごうと流れているのもはっきりと分かる。もっと手前を見ると風にそよぐ木々の葉が太陽の光を浴びて輝いている。まさに、すがすがしい上高地にいるような臨場感だ。

 同じ感覚を覚えた記憶がよみがえった。1996年11月、平面テレビ「ベガ」の発表会だ。当時「あったらいいけど、できっこない」と言われたブラウン管の平面化を実現したが、初めて見たとき「車窓から景色を眺めているのと同じだ」と感じた。

 会場に並んだテレビには、近藤哲二郎氏が開発したDRC技術は搭載されていなかったが、肉眼で実世界を見ているかのような感動を与える映像づくりをこのときから追求し、ISVCにたどり着いたことが分かる。

 ソニーは魅力的な製品を他社に先駆けて生み出し、市場を創出してきた。自由闊達で旺盛なチャレンジ精神の持ち主が集まるソニー技術者集団の面目躍如といえる。

 取材では「壊す」「次の産業を創る」といった言葉が何度も出てきた。創業者の井深大氏は真空管に代わるトランジスタに夢を託し、もう一人の創業者、盛田昭夫氏はオーディオに携帯性を持たせたウォークマンで一世を風靡(ふうび)。新たな価値を生み出すチャレンジャー、新市場を創るイノベーターが「ソニーな人」なら、次元を変える研究開発に取り組む近藤氏もまさに「ソニーな人」だ。

 そのためには20年先を見通す力が求められる。近藤氏は「今の延長線上のトレンドは予測、(アナログからデジタルのような)未来が変わる潮目をみるのが推定」と指摘、推定の重要性を説く。

 その上で「ソニーだけでなく日本の電機メーカーは高品質・低価格でスタンダードをつくった。元気なときに次の産業を創るべきだったのに、高品質を捨てて低価格に走った。その結果、韓国や中国に負け、衰退の道を歩んでいる」と厳しい評価を下す。

 しかし、「未来を推定する能力は先頭を走ったものしか持てない。予測でしか動いたことがないものは無理。だからソニー、日本は再び先頭を走ることができる。今は踏ん張りどころ」とエールを送る。今こそ「ソニーな人」が求められると感じざるを得ない。(編集委員 松岡健夫)

 ●=Iの右肩に3=Iの3乗

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