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川重クーデターに質問集中 株主明かす「社長は憎しみに満ちた表情だった」
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川崎重工業の株主総会会場に入る株主ら=6月26日、神戸市中央区(大塚聡彦撮影) 神戸市内で26日開かれた川崎重工業の定時株主総会では、三井造船との経営統合の交渉白紙化と前社長ら取締役3人の電撃解任について質問が集中した。多くの株主が口にしたのは、意外にも交渉白紙化に対する好評価だった。株主の関心は“クーデター”そのものよりも、川崎重工が単独で生き残れるか、成長戦略をどう描くのかという点に移ったようだ。
「私も三井造船との統合にメリットはないと思っていた」
「交渉白紙化で株価は上がった。良い判断だった」
質問に立った株主からは村山滋社長ら新経営陣の行動を評価する声が上がった。実際これまで、両社の経営統合が実現した場合、三井造船にはメリットがあるとみられてきた。
13日に就任したばかりの村山社長は冒頭、「(解任された)3人は経営の中枢を担う者として不適格と判断した」と前社長らを断罪。そのうえで「ご心配、ご迷惑をかけた」と陳謝した。3氏はこの日の総会を欠席した。
経営陣が居並ぶステージに近い席に座っていた男性株主は終了後、「解任された3人のことに触れるときの村山社長は、すごい形相をしていた。憎しみに満ちた表情を浮かべていた」と振り返った。
それほどまでに、3人の“暴走”に対し、現経営陣が危機感を募らせていたことがうかがえる。
村山社長は「今般の事態は当社のガバナンス(企業統治)体制が機能した一場面だ」と胸を張った。
三井造船との統合交渉打ち切りや前社長の解任については多数の質問が事前に寄せられたが、村山社長は「メリット、デメリットを検討した結果」として、守秘義務を楯に詳細は語らなかった。
代わって総会会場では、川重の「その後」に質問がシフト。特に社内最小の事業部(カンパニー)で造船を担う船舶海洋カンパニーは、担当役員が「中国との競争がかなりしんどくなる」と認めざるを得ないほと経営環境は厳しい。
しかし、担当役員は「潜水艦事業や海外展開を進めれば、十分生き残れる」と言い切った。
さらに、ブラジルで他社と合弁で建設中の最新鋭の造船所は、利益貢献が期待される。担当役員は「工事は順調だ」と説明した。
一方、他事業の堅調さには自信を見せ、村山社長は「航空宇宙は非常に安定している。精密機械も中国市場が回復すれば伸びる」と語った。
他の事業が好調な間に、造船事業の収益をどれだけ好転できるかが、川崎重工の将来を占うカギとなりそうだ。
また、質問に立った株主17人のうち4人が、陸上自衛隊ヘリコプター納入をめぐる官製談合への関与を批判した。村山社長は「かかわり方が軽度で不起訴だった」と火消しに躍起。今後はコンプライアンス(法令順守)の徹底も求められそうだ。(南昇平、織田淳嗣)