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右肩上がりの女性育毛市場で争奪戦開始 各社独自の戦略で事業強化
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高齢化や仕事によるストレスなどで薄毛に悩む女性が増える中、日用品や化粧品各社による女性向け育毛市場の争奪戦が始まった。市場拡大が見込めるためで新規参入が相次ぐほか、先行企業はバイオベンチャー企業との技術提携や新商品を投入したりして事業強化を図る。その戦略は各社各様だが、女性のハートをつかむのはどこか。
ライオンは6月、通信販売限定で初の女性向け育毛剤「フルリア」を発売した。発毛促進と脱毛予防という両方の効果を持つ有効成分を配合したのが最大の特徴だ。合わせてシャンプー、コンディショナーも発売。先にコンディショナー、後でシャンプーを使う方法を提案し、髪のハリやコシ、ふんわり感などが出せるようにこだわった。
脱毛や薄毛関連の市場規模は育毛用の医薬品、植毛、かつらなどを合わせると約2000億円とされる。ライオンによると、このうち女性の育毛剤市場は「現在100億円規模で最近は前年比2桁の伸びをみせている」(特販事業本部通販事業部の民野洋一郎企画開発室長)。
育毛市場全体からみれば規模は決して大きくないものの、育毛剤を使用する女性が増えるにつれて、右肩上がりで伸びている。さらに「これまで使ったことはなくても、頭髪に悩みを持つ女性は多く、潜在ニーズは大きい」と民野室長は今後の伸びしろの大きさを指摘する。
現在、女性向け育毛剤市場を牽引(けんいん)するのは、富士産業(香川県丸亀市)の「リリィジュ」やメディア・プライス(福岡市)の「柑気楼」といった通販商品だ。
市場も通販を中心に伸びていることから、ライオンはサプリメント「ラクトフェリン」などで培った通販ビジネスのノウハウを女性向け育毛剤事業に生かす。「お試しで獲得した新規顧客をフォローすることでリピートにつなげる」(民野室長)戦略だ。その実現に向けて昨年1月、通販事業部内に企画開発室を立ち上げた。
民野室長は「薬用有効成分に男女の差はないが、女性とはコミュニケーションの取り方が重要になる」と指摘。「女性は育毛のことをもっと知りたいというニーズが強く、それに応えられるチャンネル(選択肢)が通販だ。コミュニケーションを通じ、市場の拡大も図れる」と考えるからだ。
これらの戦略を基に、民野室長は「3~5年でシェアをナンバーワンレベルに持っていきたい。『フルリア』を最上位レベルのブランドに育てる」と意気込む。それだけ育毛効果に自信をみせる。育毛に悩む40~60代の女性を対象に行った「フルリア」のモニター調査で92%が「継続して使いたい」との意向を示したからだ。
「かつてより若年層の女性の育毛剤使用が増えてきた」と指摘するのがバスクリン。実際、市場価格が1000円前後と比較的安価な「モウガL モルティ」の売れ行きが好調という。
「女性も30代前半から頭髪を気にするようになり、ライト感覚で予防的に使う人が入店ついでに購入するケースも増えている」と分析する。年代層の広がりに合わせて高級品から低価格品まで多彩な商品をそろえる方針だ。
一方、資生堂は独自戦略で有望市場を攻める。毛髪再生医療の本格研究に着手するため、カナダのバイオベンチャー企業、レプリセルライフサイエンスと技術提携することで5月に基本合意した。同社の毛髪再生医療技術の導入に向けて、契約金4億円を支払う。
レプリセルの毛髪再生技術は、切除部分が直径5ミリ前後の円形の頭皮だけと少ないのが特徴だ。植毛は通常、後頭部の頭皮を数センチから十数センチ切除して移植されるだけに、女性向け育毛市場への波及は大きそうだ。
この頭皮から特定細胞だけを取り出し、同社の細胞培養プロセスで培養した後、薄毛部分に注入する方法だ。
同社は、美容院などサロン向けの育毛剤「ザ・ヘアケア アデノバイタルスカルプエッセンス」を2011年2月に投入。発売から1年半で100万本超を売り上げた。「サロン向けでは年間30万本でヒットと言われており異例の大ヒット」(広報)だ。
このヒット商品に、レプリセルの再生医療を加えることで、育毛剤使用者に再生医療による対策にも関心を持たせるとともに、再生医療施術後のケアに育毛剤使用を促す。「市場の食い合いではなく、シナジー効果を狙う」という。
女性を意識する同社は5年後をめどに、美容と医療が融合した毛髪再生医療の事業化を目指す。(兼松康)