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LCCの旅行客を狙え! 交流人口増でバスにも恩恵? 福岡・西鉄×大阪・南海がコラボ
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西日本鉄道が関西の大手私鉄、南海電気鉄道と協力関係を強化している。福岡と大阪。500キロ離れた地方の鉄道会社を結びつけたのは、日本の空を頻繁に飛ぶようになった格安航空会社(LCC)だ。「空飛ぶ電車」と呼ばれるLCCは、観光客ら両地域を移動する新たな需要を掘り起こしつつある。両社はLCCを足がかりに、旅行客をさらに増やし、路線バスや在来鉄道の市場拡大を狙っている。(大森貴弘)
西鉄は、沿線住民向けに発行する広報紙「にしてつニュース」7月号で、南海が作製した大阪観光特集を掲載した。見開き2ページを使い、有名な通天閣界隈の「新世界」や名物料理・串カツなどを紹介した。その中にこんな一文を盛り込んだ。
「福岡から新世界への旅は格安航空の『LCC』や『西鉄高速バス』が便利でお得!」
西鉄は大阪-福岡間に夜行バスを運行しており、同区間のLCCとライバル関係にある。敵を利する内容を、なぜ広報紙に載せたのか。西鉄広報室の藤田るみ氏は、こう解説する。
「観光客のパイ全体を大きくすることを考えました。安いLCCができたから大阪へ行こう、という人が増えれば、行きはLCC、帰りは西鉄の夜行バスを利用してくれるかもしれません」
LCC人気は国内航空会社の旅客数を大きく押し上げている。
国土交通省によると、平成24年度の国内線旅客数は、前年度8・7%増加した。中でもLCCが就航した路線で増加が目立つ。昨年3月、全日本空輸系のLCC「ピーチアビエーション」が就航した関西-福岡路線の旅客数は24年度で47万人。前年度の3・8倍にも達した。
もちろんLCCにより、西鉄が運行する大阪-福岡の夜行バスの利用者は減少した。だが、大阪と福岡を行き来する人間は着実に増加したようで、福岡空港から別府や阿蘇など九州内の観光地に向かう高速バス利用者は微増となった。
西鉄と南海は、このLCCによって発掘された新たな客層に目を付けた。昨年10月、南海が発行する広報紙「NATTS」に福岡・柳川を、「にしてつニュース」に和歌山・高野山の観光情報を相互掲載した。
これが大ヒット。読者プレゼントの応募はがきが、通常の1・5倍に達した。はがきには「大阪に行ってみたい」と書かれたものも多かったという。南海にも「以前福岡に住んでいたので懐かしく、行きたくなった」などのメールが数十件届いたという。
両社は7月に相互PRの第2弾を実施した。西鉄は新世界を、南海側は天神や博多のグルメに加え、西鉄が運行する屋根なし観光バス「福岡オープントップバス」の情報も掲載した。今後も同様の取り組みを進めるという。
西鉄、南海のようにLCCで生まれた市場を取り込もうという動きは、全国共通で加速している。成田空港では、バス事業者がJR東京駅と結ぶ路線をほぼ倍増させた。西鉄も今年3月、福岡空港と福岡都市圏を結ぶバス路線を新設した。
西鉄の倉富純男社長は「バスのダイヤ改正や増便で工夫し、LCCで拡大した旅行需要を、しっかり取り込みたい」と述べた。