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富士山で使えるLTEが好評 アンテナ工夫、山頂めがけて電波飛ばす
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世界文化遺産に登録され、登山者で連日にぎわっている富士山の登山道や山頂でも、高速データ通信「LTE」を利用できるサービスが好評だ。
山頂部分を一周する「お鉢めぐり」の最中にもスマートフォン(高機能携帯電話)で高速での画像の送受信などができる。高さは日本一の3776メートルとあって、携帯電話各社は通常とは異なる電波の送信方式を採用。
山麓から頂上に向けて吹き上げ、電波が火口の円周全域をカバーできるように山の形状も考慮して工夫を凝らした。各社は富士山登山の新たな楽しみ方として、来夏以降もサービスを継続する方向だ。
昨年までは、各社は富士山に第3世代通信規格「3G」の電波を届くようにしていたが、NTTドコモとソフトバンクモバイルは7月11日、KDDIも同16日からLTEのサービスを開始。山頂の山小屋の営業期間が終わる8月下旬まで提供する。
通信が高速化したことで、山頂の景色や「ご来光」をスマホで撮影し、その場で友人にメールをしたり、フェイスブックなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に画像などを掲載しやすくなった。
通常の市街地の携帯基地局では、高さ30メートル前後の鉄塔の上部にアンテナを下向きに設置し、電波を下に吹き下ろす方式が一般的だ。しかし、富士山向けには上から吹き下ろすのは不可能なため、各社は吹き上げ式を採用。山麓の基地局にアンテナを上向きに設置し、山頂めがけて電波を飛ばしている。
ドコモの場合、富士山麓の静岡、山梨両県の計6カ所の基地局から山頂に向けてLTEに対応した2ギガヘルツ帯、800メガヘルツ帯の電波を発信。吉田口と須走口、御殿場口、富士宮口の4つの登山道をすべてカバーエリアにした。
山頂を電波の「圏内」にするための工夫がある。“下界”から発信された電波を、各社は山頂に設置した臨時中継局で一度受信し、火口の円周に沿って飛ばし直す。そうしないと、下からの電波が「どこまでも上に突き抜けていってしまう」(ドコモ)からだ。
富士山での通信速度は、ドコモの場合、「実測値で毎秒20メガビットを超えることもあり」(同社)、同一の基地局内に多数の利用者がいる市街地よりも速くなるケースが多いという。