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「お値打ち感」増税備え差別化 小売り各社、自主企画商品の強化急ぐ
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流通大手のプライベートブランド 来春予定される消費税率引き上げに備え、小売り各社がプライベートブランド(PB、自主企画商品)の強化を急いでいる。各社とも増税後への危機感は強く、顧客に「お値打ち感」を印象づけて、懸念される消費の冷え込みを防ぐ構えだ。共同開発でスケールメリット拡大を図ったり、高品質化、利便性に磨きをかけたり。差別化を図る争いは乱戦模様を呈している。
「両社が手を組んで原価低減を図る。売価を下げ、大手に少しでも追いつきたい」
ライフコーポレーションの岩崎高治社長は2日、ヤオコーと取り組むPB共同開発の発表会見で、こう力を込めた。それぞれ販売する独自のPBと別に、共同PBの第1弾としてカップ麺やトイレットペーパーなど約20品目を加える。
ライフは近畿圏と首都圏に食品スーパー232店、ヤオコーは埼玉県中心に同127店を展開。メーカーからの全量買い取りで原価を抑えるPBは、仕入れ規模の大きさが価格を左右する。それだけに日常性が高い食料品などは共同PB化によって低価格を実現する狙いだ。
共同PBをめぐっては両社のほか、中京圏を地盤に総合スーパーのアピタなどを展開するユニーグループ・ホールディングス(HD)も関西のイズミヤ、中四国のフジと2009年に始めた3社開発を加速させている。
PBをめぐるこうした動向について、調査会社の富士経済は「コモディティ(普及品)化している品目で低価格商品の開発が進み、PB食品は今後も継続的な市場拡大が見込まれる」と指摘。今年1月に公表したリポートで、PB食品の市場規模が2017年には3兆2093億円と、11年比33.1%増になると予測した。
中堅などが結束して消費者の節約志向に対応する中、流通2強のセブン&アイ・ホールディングス(HD)とイオンは、品質や利便性を向上させる「高付加価値化」の道をひた走る。
その典型例がセブン&アイの「セブンゴールド 金の食パン」(4月発売、1斤250円)だ。
競合するメーカー品(ナショナルブランド、NB)の市価より100円近く高いにもかかわらず、「原料や製法にこだわり抜いた圧倒的なおいしさが支持され」(鎌田靖・セブン-イレブン・ジャパン商品本部長)、8月末までの販売数1500万個のヒットを飛ばす。
イオンも、1食分の主菜・副菜と米飯をセットにした冷凍PB「トップバリュ レディーミール(ワントレー)」シリーズの売り上げを伸ばしている。また8月末には、PB5000品目の「年内価格凍結」を宣言。「原材料高などのコスト増加分は、サプライチェーン全体の効率化で吸収する」(仲矢長蔵・イオントップバリュ社長)方針で、品質と価格の両面から徹底した差別化を目指す。
円安の長期化や原油高などに悲鳴を上げるメーカーが、相次ぎ値上げに踏み切る中でも、PBの低価格維持に躍起な小売り各社。その背景には「思い切ってお金を使いつつ可能なところは節約に努める、といったメリハリを付ける消費者が今後も増えるだろう」(川野澄人・ヤオコー社長)との読みがある。
日本総合研究所の小方尚子主任研究員も「ハレの日のぜいたくと、日常の倹約とに二極化した消費動向は続く」とみる。
サラリーマンの月給に当たる所定内賃金は今年7月まで14カ月連続で減少が続いており、今後予定される消費税増税もあって消費者のデフレ志向は簡単に払拭できない-というのが小売り業界の共通認識だ。
一方、廉価を武器とするディスカウントストアは、厳しい経済環境にも商機をみる。最大手ドン・キホーテの高橋光夫専務は「安値に絶対的な自信がある。増税後は総合スーパーなどの客を奪っていく」と意気軒高だ。
今後はPB拡充に力を注ぎ、売上高構成比を現在の約10%から17年に30%へ引き上げる計画。従来の「NBなどの大量仕入れによる安値実現」というビジネスモデルを変えていくという。
こうして各社をPB強化に駆り立てている原動力は「全商品の平均粗利率約25%に対し、PBは40%近い」(高橋専務)という収益性の高さに他ならない。
言い換えれば、PBは「薄利多売」という小売り各社の事業モデルに風穴を空けるためのマストアイテムというわけだ。
もっとも、PBも決して“魔法のアイテム”ではない。「安かろう悪かろう」のラインアップでは、目の肥えた消費者に見限られるのも必然だ。
PB拡大によってメーカー側から価格決定権を奪いつつある小売り各社は、消費者にとって魅力的な商品企画力が問われる正念場を迎えている。(山沢義徳)