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ソフトバンク誤登録で総務省注視 通信の「安心・安全」揺るがす

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ソフトバンク誤登録で総務省注視 通信の「安心・安全」揺るがす

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新商品発表会で「重大事故がないのはソフトバンクだけ」と語るソフトバンクの孫正義社長=9月30日、東京都港区  ソフトバンクモバイルが携帯電話を分割払いで購入した顧客のうち6万3000人に対して、実際には代金を支払っているにもかかわらず信用情報機関に「滞納」の誤登録情報を送信していた問題は「安心・安全なサービス」の順守を義務付けられている通信事業者への信頼を揺るがしている。総務省は「業界では初めての問題で、利用者への影響は大きい」と注視している。

 「重大な通信障害を起こしていないのはソフトバンクだけ」。ソフトバンクの孫正義社長は9月30日、冬春商戦向け新型スマートフォン(高機能携帯電話)などの発表会で、他社の通信障害の事例をあげつらい、850日間も重大事故がないと説明した。

 総務省が規定する「重大事故」とは、通信サービスの停止が2時間以上継続し、かつ3万人以上に影響を及ぼした場合。大手通信事業者は顧客の増加やスマホ普及によるデータ通信量の急増などで何度も通信障害を起こし、対策に追われてきた。

 孫社長は「なんとしても事故を起こさないという決意のもとにやってきた」と自信満々に他社との違いを強調した。

 しかし、その翌日に発表された誤登録の事故が、通信障害ではないものの、まれにみる“重大な事故”であることはいうまでもない。

 誤登録した人のうち1万6800人についてはカード会社や金融機関から信用情報機関に登録内容の照会があり、クレジットカードが発行できないなどの被害にあった恐れがあるという。

 いわゆるブラックリストと呼ばれる「滞納」の履歴は個人の信用情報を傷つけ、重大な影響を及ぼしかねない。ある意味、通信障害より社会的影響は大きいともいえる。

 孫社長は誤登録の発表を翌日に控えていることを知りながら「当社だけ重大事故はない」とうそぶいた。

 都合のいい情報だけをアピールして、悪い情報は後回しの姿勢では、いくら携帯電話の顧客を増やして業績を伸ばしても、孫社長の経営者としての信用も損ないかねない。

 ソフトバンクは「9月末まで顧客への説明やおわびに追われていた」としているが、ならば新商品発表の場で社長自らが迅速に誤登録の問題を説明すべきではなかったか。(芳賀由明)

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