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日本企業、トルコ投資拡大 現地ニーズ取り込み課題
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約7500万人の人口を抱え、順調な経済成長が続くトルコへの日本企業の投資が拡大しつつある。所得水準の向上で消費拡大が期待され、中央アジアなど周辺国を含む巨大市場としての将来性も踏まえて自動車、電機、食品メーカーが相次いで進出。拠点整備を検討する日本企業も少なくない。
ただ、日本企業の進出は180社程度にとどまり、3000社を数えるドイツや1000社の米国など先行する欧米企業との差は大きい。高い技術力を生かしながら、現地のニーズをいかに取り込むかが課題になりそうだ。
トルコ最大の都市、イスタンブール。トプカプ宮殿やブルーモスク、アヤソフィアなど歴史的建造物を擁する旧市街一帯は世界遺産に指定され、観光客やビジネスマンでにぎわう。イスタンブールだけで約1400万人と国の人口の約2割が集中する経済都市だ。
総合商社や金融機関など日本企業の多くがイスタンブールに拠点を置き、ビジネスチャンスを探っている。
「トルコの平均年齢は約30歳と若い。欧州、中央アジア、中東、アフリカに近い地の利が優位で周辺国を市場にする製造業にはうってつけだ」(大西秀和・伊藤忠商事トルコ代表)
2011年に現地企業を買収し、エアコンの生産に乗り出したダイキン工業は室外機の台数ベースで年間2万台を生産し、「将来は中央アジアなど周辺国に輸出したい」(亀川隆行・ダイキントルコ副社長)と事業拡大を狙う。損害保険ジャパンは約280億円でトルコのフィバシゴルタ保険を10年11月に買収、自動車保険などの販売に本腰を入れている。
トルコは「人脈の国」(青木雄一・欧州三井物産本部長補佐在イスタンブール)とされ、外国企業が進出する際は「コチ」や「サバンジュ」など現地の主要財閥と提携するケースが目立つ。10月から即席麺を現地で生産を始めた日清食品ホールディングスも現地の食品大手と組んで国内需要の開拓を目指しており、「もともとトルコ人は麺食文化に親和性がある」(広報部)と意気込む。
出生率の高さを背景に、トルコの労働力は豊富だ。日本貿易振興機構(ジェトロ)が現地の日系企業を対象に実施した調査によると、トルコ人について、勤勉で真面目▽欠勤率が低い▽残業をいとわない▽親日的-と高く評価している。
好調なトルコ経済を支えるのは、国内総生産(GDP)の7割を占める民間消費だ。ジェトロによると、13年のショッピングモールの建設件数は310件にのぼり、150件だった08年に比べて倍増し「新しい物が好き」(ジェトロ・イスタンブール事務所の牛田遼介氏)という気質もあって「消費者向けビジネスが有望」(青木氏)なのは間違いない。
4世紀以降、ローマ帝国からオスマン帝国の首都として栄えた歴史を持つイスタンブールは世界から年間3100万人(11年)の旅行者が訪れる観光都市。世界230都市を結ぶトルコ航空などが支える観光産業はGDPの3.7%を占める。
イスタンブールでは6月、タクシム広場周辺で大規模な抗議デモが起きたが、「トルコ経済にはほとんど影響がない」(与縄伸一・丸紅イスタンブール支店長)という。
ただ、トルコは日本と同様にエネルギー資源に乏しく、石油や天然ガスなどの大半を輸入に頼り、構造的な貿易赤字に悩む。それだけに経済が発展すればするほど赤字が膨らむというジレンマも抱える。また、隣国シリアをめぐる緊張が高まれば「地中海が封鎖され、貿易が滞る」懸念も消えないが、2023年の建国100周年に向けインフラ整備など大型プロジェクトも相次ぐ。日本企業にとって商機は広がっている。(巽尚之)