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インフラ輸出30兆円へ拡大 トルコ海峡地下鉄開通 首相が式典出席

ニュースカテゴリ:政策・市況の国内

インフラ輸出30兆円へ拡大 トルコ海峡地下鉄開通 首相が式典出席

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 日本がインフラ輸出の促進に向けてアクセルを踏んでいる。トルコ最大の都市イスタンブールでは29日、大成建設が海底トンネル工事を担当した地下鉄が開通。安倍晋三政権はインフラ輸出の拡大を成長戦略の柱に掲げており、日本企業が強みとする高度な技術やノウハウを生かして経済発展の続く新興国などにインフラを売り込み、商機拡大を支援する。

 ただ、インフラ輸出は中国や韓国なども国を挙げて取り組んでおり、日本は官民連携の一段の加速や事業リスクの軽減策が課題となりそうだ。

 激しい受注合戦

 イスタンブールをアジア側と欧州側に二分しているボスポラス海峡。トルコ訪問中の安倍首相は29日、同海峡を海底トンネルで横断する地下鉄の開通式典に出席。インフラ輸出を拡大させる上で、日本企業の高い技術力を自らアピールする狙いだ。

 トンネルは総延長約13.6キロで、大成建設とトルコの建設会社2社の共同事業体が2004年に着工し、11年に貫通した。同区間で地下鉄が開通し、この日のお披露目となった。

 大成建設の山内隆司社長はイスタンブールで記者団に対し「今後も技術の強みを生かせる案件に的を絞り、海外でのプロジェクトに挑戦したい」と述べた。

 安倍首相が首脳外交で他国との経済関係を強化しようとしていることにも「民間企業にはありがたい」と述べた。

 トルコではこの海底トンネル以外にも大型のインフラ事業がめじろ押しで、参画する日本企業も多い。IHIは同国西部で全長約3000メートルの世界有数のつり橋を建設中で、15年度の完成を目指す。他にも運河や新空港などの計画が控える。

 日本にとっては、トルコ市場の有望さが魅力といえる。人口が7000万人以上で1人当たりのGDP(国内総生産)が1万ドルを超える国は、世界で日本と米国、ドイツ、ロシア、ブラジル、トルコしかない。現政権は共和国建国100周年にあたる23年に向け、世界経済の上位10位入りする目標を掲げており、進出を検討する日本企業も多い。

 安倍政権は6月に閣議決定した日本再興戦略で、20年には日本企業による海外でのインフラ受注額を現在の3倍にあたる約30兆円に引き上げる計画を盛り込んだ。首脳ら閣僚が先頭に立つ「トップセールス」も毎年10件以上行うとした。

 インフラ輸出をめぐっては経験や実績の豊富な欧米に加え、新興国である中国や韓国も本腰を入れている。激しい受注合戦を勝ち抜くには、中韓勢に比べ不十分とされるコスト競争力の強化に加え、官民連携の充実が求められる。

 問われる真価

 日本総合研究所の石田直美シニアマネジャーは「従来のインフラ輸出は官がプランを描き、民間企業を呼び込むものだった」と指摘する。ただ、海外で日本の存在感を高めたい政府と、実利を優先する民間企業とでは、考え方の違いが生じることもある。相手国が本当に必要とするインフラの整備と、日本企業の海外市場開拓を両立させるためにも、「民間企業が主導し、それを官が後押しするという姿勢を明確にする必要がある」と石田氏は語る。

 また、特に新興国でのインフラ開発は一般的に投資回収に長い期間が必要となり、政情不安や債務不履行などのリスクとも隣り合わせで、どう軽減するかが課題だ。野村証券の木下智夫チーフエコノミストは「日本企業が現地でリスクをとる上で、官はモラルハザードにならないように気をつけながら、一定の支援策を講じるべきだ」と話す。

 少子高齢化が進み国内市場が縮んでいく中、日本が経済成長を実現するには新興国などの成長を取り込むことが不可欠。日本が培ってきた技術や経験を生かしたインフラ輸出はその有力な布石で、「オールジャパン」の真価が問われる。(イスタンブール 森田晶宏)

 日本企業が関わる海外の主要インフラプロジェクト

 国・地域 受注・契約時期             内容

 トルコ  2011年3月  三菱電機が国営衛星通信会社から2基の通信衛星を受注。13~14年に順次打ち上げ予定

 インドネシア 11年10月 電源開発と伊藤忠商事、現地の石炭大手が石炭火力発電所を建設し、電力を国有電力会社に売る契約を締結

 ベトナム   11年12月 大成建設がハノイ郊外の国際空港の旅客ターミナルの建設工事を受注

 英国     12年7月  日立製作所が高速鉄道の車両596両を受注。13年7月にも270両の追加受注が内定

 米国     13年9月  川崎重工業がニューヨーク州交通局向けの通勤電車92両を受注。17~18年に順次納入予定

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