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ゲーム業界、セット販売に活路 苦肉の策…年末でも“目玉”なし
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新作ゲーム機が留保されるなか、不振の続く任天堂の「WiiU」は巻き返しなるか、ソフトの力に注目が集まっている=大阪市浪速区、ジョーシンディスクピア日本橋店 人気ゲーム機の後継機種「プレイステーション4」と「Xbox One」の年内発売が実現せず、目玉商品不在で迎えた家庭用ゲームの年末商戦。新機種を待つユーザーの買い控えが懸念されるなか、メーカー各社はソフトや周辺機器をつけた「セット販売」でしのぐという展開となっている。業界が開発費の安いスマートフォン(高機能携帯電話)ゲームに主軸を移す中、かねてからささやかれる消費者のスマホゲーム移行も今後加速するのだろうか。
国内の過去10年のゲーム機の売上高(ファミ通調べ)は、平成19年の3278億円がピーク。22年には1755億円まで下がり、以降は毎年1700億円台での横ばいが続いている。今年6月までの半年間で見ると、663億円とやはり低い水準にとどまっている。
逆に、スマホやタブレット端末向けのオンラインゲームは23年に3648億円、24年は4943億円と大幅に拡大。売上高の推移では、明暗がはっきり分かれた格好だ。
だが、販売現場の感覚は、数字とは少し様相が異なる。大手家電量販店の上新電機(大阪市浪速区)の高天洋正J&E営業部部長は、家庭用ゲームとスマホゲームとの競合について、「なくはないが、ソフト供給の充実の方が(売り上げを左右する)大きな要素」と解説する。
実際、ゲーム機の19年の好調は「脳トレ」シリーズの人気で任天堂の「ニンテンドーDS」が伸びたことが要因だった。結局、本体そのものよりも、メガヒットソフトがあるかどうか。ソフトの充実がハードの売れ行きを左右しているのだ。
今年、売り上げが低迷した家庭用ゲーム機。だが、9月にニンテンドー3DS用ゲームソフト「モンスターハンター4」発売後は、盛り返しもみせている。「モンハン4」は発売から約2カ月半で国内出荷400万本突破という記録を達成。シリーズの累計販売は2800万本という超人気シリーズだ。
シリーズ初となる高低差を活かした立体的なアクションや、インターネット通信によるマルチプレイにも対応した「モンハン4」。メーカーの高い技術力が発揮されたハイレベルなソフトで、幅広いユーザーから支持を集める結果につながった。
一方、スマホゲームはゲーム機用に比べて開発コストが安いため“乱立”も続いており、ヒットが出づらい環境となっていることも否めない。粗製乱造も目立つため、「内容の濃いゲーム機に戻ってきているのでは」との観測もあるほどだ。
また、人気のスマホゲーム「パズル&ドラゴンズ」は今月12日、ニンテンドー3DS向けに、ストーリーやゲーム性を高めた形で「パズドラZ」のタイトルで発売。こうした「逆輸入」も、家庭用ゲーム機には追い風となっているという。
とはいえ、人気ゲーム機の後継機種「プレイステーション4」と「Xbox One」は国内発売は来年。年末商戦が「目玉商品不在」である状況に変わりはない。
そこで家電各社が期待するのは、昨年の発売以降、不振が続く任天堂の据え置き型ゲーム機「Wii U(ウィー・ユー)」のセット販売による売り上げ増だ。
任天堂は10月末、本体に「NewスーパーマリオブラザーズU」「Wii Party U」の人気ソフト2本と専用リモコンなどをつけた「ファミリープレミアムセット」を3万2800円で発売。ゲーム機とソフトを別々に買うより1万6100円お得で、今月5日には健康管理ソフトの「Wii Fit U(ウィー・フィット・ユー)」をつけた3万4800円のセットの店頭販売も開始した。
上新電機の高天部長は「もはやハード(ゲーム機)単体では売れなくなるかもしれないが、今月は『二段式ロケット』に火がつくタイミング」と、来年以降の伸びに期待している。
競合社もセット販売に活路を見いだす。ソニー・コンピューターエンターテイメントは今月5日、携帯用ゲーム機「PS Vita」にメモリーカードや表面の保護フィルムをつけたバリューパック(2万2千円)を発売。
「プレイステーション3」では12日、同社のゲームソフト「パペッティア」(9月発売)をつけたセットを発売。価格はハードのみと同じで2万4980円で「実質無料でソフトが手に入る大変お得なセット」(同社)とPRに躍起だ。
新作ソフトとタイミングを合わせての本体販売までは、セット販売で…。華々しさはないが、メーカー側にとっては「苦肉の策」が、次世代機発売までの売り上げを牽引(けんいん)することになりそうだ。(織田淳嗣)