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サントリー、米ビーム買収で海外戦略加速「強力な事業が誕生」
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サントリーホールディングス(HD)は13日、バーボン「ジムビーム」などで知られる米酒造大手のビーム(イリノイ州)を買収すると発表した。買収にはビームも同意しており、今年4~6月をめどに、ビームの発行済み全株式を160億ドル(約1兆7000億円)で取得する。
サントリーグループによる買収では過去最大規模で、日本企業による買収としてもソフトバンクによる米携帯大手スプリント・ネクステル買収などに匹敵する最大級の案件になる。これによりサントリーHDはウイスキーなどのスピリッツ(蒸留酒)事業の売上高が世界3位に躍り出る。1株当たり83.5ドルで全株を取得し、費用は手元資金と借り入れで賄う。
ビームは、「ジムビーム」のほか、スコッチやウオツカなどを幅広く展開する世界4位のスピリッツメーカー。サントリーHDも「山崎」や「白州」といったウイスキーブランドを持ち、買収によりスピリッツの商品力を強化する。
サントリーHDは、買収によりビームの米国の販路など事業基盤を活用するほか、両社のブランド力を生かしてロシアやブラジル、インドといった新興国での事業展開を加速する。
ビームの2012年の売上高は24億6000万ドル(酒税抜き)。
サントリーHDが米ビームを買収する背景には、海外戦略にはブランド力が不可欠という業界事情がある。
「世界でも類を見ない強力なポートフォリオ(組み合わせ)を持つスピリッツ(蒸留酒)事業が誕生する」。今回の買収でサントリーHDの佐治信忠社長が寄せたコメントには、今後の海外展開への手応えがにじむ。
消費者が実際に口にする食品や飲料は、愛着や安心感を生み出すブランドの力が、市場攻略の決め手となるケースが多い。別の大手飲料の幹部も、「攻略する国に、強いブランドがあれば、それを買収するしかない」と打ち明ける。
サントリーも09年に仏清涼飲料大手・オランジーナ・シュウェップスを約3000億円で、昨年も英製薬大手グラクソ・スミスクラインの飲料事業を約2100億円で傘下に収めるなど、強いブランド買収が海外成長の原動力となった。今や海外売上高は3833億円(12年12月期)と全体の2割強に及ぶ。
昨年7月、主力子会社のサントリー食品インターナショナルを東証1部に上場したのも、買収に必要な資金調達のため。今回の買収劇も、一連の海外戦略の延長線上にある。
「ジムビーム」などの有力ブランドを持つビームとサントリーを合わせたスピリッツ事業売上高の世界シェアは、英ディアジオなどに続く3位へ躍進する。買収額に見合う“果実”を受け取れるかかじ取りが注目される。