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【業界展望】好況鉄鋼、急ぐ生産最適化 海外進出加速、設備更新でコスト削減

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【業界展望】好況鉄鋼、急ぐ生産最適化 海外進出加速、設備更新でコスト削減

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 円高是正により輸出環境が好転した自動車メーカーなどの好調な生産を受け、鉄鋼業界は苦境から一転、活況を呈している。鉄鋼各社がフル生産態勢で旺盛な需要に応えているからだが、その一方で固定費削減のため過剰設備を見直す動きを緩めない。むしろ通商問題も絡んで国内から海外への生産移転は続きそうだ。需要増も国内生産の維持が精いっぱいで、最適な生産態勢の構築を急ぐ。

 「国内景気の回復で需要は増加した。建設向けが好調で、製造業向けも底を打ち、年央から増加に転じた。(需給の)タイト感が強まっている」

 日本鉄鋼連盟(鉄連)の友野宏会長(新日鉄住金社長)は、2013年の鉄鋼業界をこう振り返った。

 新設には踏み込まず

 建設向け需要は東日本大震災からの復旧・復興需要が本格化したことで膨らみ、円高是正は輸出産業の鉄鋼需要を増大させた。このため、高炉を含めた上場35社の13年度の経常利益予想は前年度の3.9倍に当たる6950億円となり、鉄鋼メーカーの好調さを裏付けている。

 これほどの活況下でも高炉各社は生産態勢の見直しによるコスト削減に余念がない。新日鉄住金と神戸製鋼所はそれぞれ、15~17年度をめどに、高炉1基を休止する。JFEスチールの林田英治社長は「世代交代設備の更新や整備などで基盤を強化すれば、コストはもう少し下げられる」と強調。生産効率化によるコスト削減とそれに伴う販売増を目指す。

 20年の東京五輪開催も鉄鋼業界にとって追い風になる。鉄連は「トータルで200万~300万トンの需要がある」と見積もる。中期的にもさらに鉄鋼需要が見込めそうな素地はあるが、高炉各社は決して設備の新設や廃止予定設備の見直しに踏み込まない。

 一方、海外へ目を向けると、中国などでは生産能力の増強を進めており、東アジアを中心に需給が緩んだ状態が続く。こうした状況が数年間続くとの見方が業界では支配的だ。

 そうした中で日本の鉄鋼メーカーは、高張力鋼板(ハイテン)など付加価値の高い製品を武器に、相次いで海外生産を強化している。特に日系自動車メーカーが集まる地域に対して、合弁企業設立などでの進出が目覚ましい。13年も国内鉄鋼メーカーは中国、東南アジア、メキシコなど自動車産業が集積する地域への進出の手を休めなかった。

 通商問題“後押し”

 自動車以外にも、シェールガスなどのエネルギー関連で鋼管需要が発生。JFEスチールの林田社長は「国内で素材を作って海外で最終製品という垂直分業のスタイルは継続的に発生してくる」と指摘する。

 鉄鋼業界はアンチダンピングなどの通商問題も抱える。鉄連によると、現在調査中も含めて9カ国24件を把握。そのうち13年に入ってからだけでも7件に達した。

 鉄連の友野会長は「直接的なダメージはあまりないものの、健全な貿易を損ない、当該国の産業競争力もそいでいる」と説明する。日本の鉄鋼業界にとっては、見過ごすことができない問題だが、通商問題を起こさない現地生産が進む契機の一つとなっているともいえる。

 今後も海外現地生産化の動きは加速しそうで、国内外での生産態勢の最適化が求められる。(兼松康)

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