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富士山「世界遺産」効果で誘客に知恵 リニア新幹線など起爆剤に

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富士山「世界遺産」効果で誘客に知恵 リニア新幹線など起爆剤に

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山梨県を訪れた外国人旅行者数  富士山が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に昨年6月に登録され、周辺地域を訪れる観光客が順調に伸びている。

 ただ「世界遺産」のブランドに依存するだけでは頭打ちになる恐れもあり、地元では温泉やワイナリーなどの観光資源を結びつけた楽しみ方を提案。2020年開催の東京五輪を見据え、山梨県内に実験線があるリニア新幹線を外国人を呼び込む起爆剤に位置づけるなど、誘客に知恵を絞っている。

 多様な言語に対応

 1月初旬の平日、富士山観光の入り口となる山梨県立富士ビジターセンター(富士河口湖町)は多くの外国人でにぎわい、台湾人の団体客や欧米、イスラム圏の旅行者が富士山の自然環境を紹介する展示を熱心に見ていた。

 「訪れる外国人は国別では一昨年まで40カ国・地域ほどだったが、昨年は南米や東欧、アフリカも広がり、約60カ国・地域に増えた」と堀内東センター長は話す。

 センターでは、英語と中国語、韓国語を話せるスタッフを配置したほか、案内用のタブレット端末はタイ語やインドネシア語なども含めて7カ国語に対応する準備を進めている。隣接地には、世界遺産の登録にあたって信仰の対象や芸術の源泉という文化的な側面を評価された富士山の意義を訴える施設として、16年度中に県の「世界遺産センター」(仮称)が整備される。

 富士山観光の最寄り駅となる富士急行河口湖駅(富士河口湖町)でも、観光総合案内所を訪れる外国人客は増えている。11年は東日本大震災の影響で約1万7000人に落ち込んだものの、12年は前年の約2.2倍に急回復し、さらに13年は前年比55%増の約6万人。国・地域別で1位のタイと2位の台湾がいずれも倍増し、全体を押し上げた。

 世界文化遺産を構成する「資産」の一つ、河口浅間神社では登録後に「興味を持って事前に調べて訪れる欧米の(費用を抑えて世界を旅行する)バックパッカーが増えた」(中田進宮司)という。

 ただ、世界遺産になっても著名な観光地ほど一時的な伸びにとどまるケースが多い。えひめ地域政策研究センターによると、姫路城(兵庫県姫路市)は世界文化遺産に登録された1993年に観光客は前年比15%増となったが、翌年は92年の水準に戻った。地元は「富士山もそうなる可能性が大きい」(富士河口湖町)と危機感を募らせる。

 地元が期待するのは、今秋にも着工されるリニア新幹線。現在、山梨県上野原市から笛吹市まで敷かれた42.8キロの実験線を本線とした上で、名古屋側を駅建設予定地の甲府市まで、東京側は神奈川県相模原市までそれぞれ延伸し、東京五輪開催時に試乗ができるよう、JR東海に働きかけている。

 山梨-東京間の一部では難工事も予想され、20年までの延伸は「現実的には極めて難しい」(JR東海)ものの、河口湖とリニアの駅を結ぶ延長40キロの県道整備を求めるなど地元の期待は大きい。「富士山だけでは東京からの日帰り圏にとどまるが、リニアの試乗で1泊以上してもらいたい」(笛吹市)

 国内向けも拡充

 一方、山梨県では温泉やワイナリーなどの既存の観光資源を掘り起こすとともに、地元の食材を使った料理など「食」の充実に力を入れ、外国人だけでなく国内各地からの集客も狙う。石和温泉(笛吹市)の一部旅館では玄米由来の菜食料理「マクロビオティック」、河口湖周辺では富士山麓の野菜を使った「富士山鍋」や鹿肉入りカレーといった料理を提供。勝沼町のワイナリー巡りや桃・ブドウのフルーツ狩りと富士山を組み合わせた観光も提案している。

 また、河口湖周辺では2本のストックを使って歩行する「ノルディックウオーキング」の普及を目指していることから、河口浅間神社の観光と同ウオーキングをセットにした世界遺産体験ツアーをJTBが団体向けに売り出している。

 観光庁は「世界文化遺産を活用する日本の情報発信は重要」として、地元を中心とした観光業界の試みを支援する方針だが、訪日外国人を富士山周辺に取り込むためには、さまざまな言語に対応できる受け入れ体制の充実が急務となっている。(藤沢志穂子)

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