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おもてなし改革に挑む中部圏 中国に観光アピール、思惑通り挽回なるか

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おもてなし改革に挑む中部圏 中国に観光アピール、思惑通り挽回なるか

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中部・北陸9県を“昇龍”にみたてたポスター(中部運輸局提供)  今年日本を訪れた外国人が11月で949万9300人となり、年1千万人を初めて突破する見通しとなった。円安による割安感などが背景にあるが、尖閣問題で落ち込んでいた中国からの団体旅行も回復している。

 ここに来て、従来は製造業中心で、観光産業への意識が薄いとされてきた中部圏も、外国人宿泊客倍増を目標とした「昇龍道プロジェクト」に本腰を入れ始めた。観光では関西や首都圏に出遅れ感が否めない中部圏だが、果たして思惑通り挽回できるだろうか。

 ターゲットは「中華圏」!縁起のいい「昇龍」でPR

 「中部地域の観光は、どこも自分の県のことだけを考えていて連携がない」と苦言を呈するのは、名古屋駅周辺の企業で構成する名古屋駅地区街づくり協議会の神尾隆会長。「モノづくりが“県境レス”であるように、観光も地域全体で考えるべき」と指摘する。

 そこで、中部運輸局と北陸信越運輸局が平成24年3月にスタートしたのが、「昇龍道プロジェクト」。中部・北陸の9県(愛知、岐阜、三重、静岡、長野、滋賀、福井、富山、石川)が一体となり、外国人観光客の誘致に取り組もうというものだ。

 この年は日中国交正常化40周年の辰年。そこで、誘致のメーンターゲットを中国、台湾、香港などの「中華圏」に設定。彼らにとって「縁起がいい」龍をプロジェクトのモチーフにしたうえで、中部・北陸エリアに這わせ、能登半島を頭、三重県を尾に見たてた観光ルートを「昇龍道」と命名した。

 「中華圏」ウエルカム!

 昇龍道の「入り口」となる中部国際空港は、国際線到着ロビーに龍のオブジェを設置。英語・中国語・韓国語の観光パンフレットを並べた「観光情報館」には中国語が話せるスタッフが常駐している。

 空港内では銀聯カードが使える店が増え、中国人に人気の化粧品や医薬品、電化製品などの品ぞろえも充実。売り上げは右肩上がりと好調だ。

 プロモーション活動にも余念がない。中国、台湾、香港などからマスコミや旅行業者を招いての体験観光ツアーのほか、今年だけでも5月に台湾、10月から11月にかけて中国(北京市、上海市)にミッションを派遣するなど、現地でのPR活動にも力を入れている。

 5月には、エリア内の観光スポットを紹介した「昇龍道百選」を中国語版や英語版などで作成。団体、家族旅行など、目的に応じた季節ごとのお薦め観光ルートを選定した。国内での認知度アップも図ろうと、11月には東京で開かれた観光博覧会「旅フェア日本2103」に初出展している。

 目標に掲げるのは、26年の外国人宿泊客400万人(24年実績は約250万人)。25年は約300万人に達したもようで、反日感情のあおりで減少した中国人観光客も、「個人旅行を中心に戻りつつある」(中部運輸局企画観光部)と手応えを感じている。

 9月に策定したアクションプランでは、特に外国人受け入れ環境の向上を重要視。ホテル・旅館での無線LAN(構内情報通信網)の整備や、公共交通機関を含む案内や表記の多言語化対応促進のほか、最近の東南アジアからの訪日外国人の増加をふまえ、来年から新たにイスラム圈の観光客対応をスタートさせる。

 課題は「お・も・て・な・し」?

 自動車産業を中心にした「製造業」エリアというイメージが強い中部。だが、今年の式年遷宮で参拝者が過去最多記録を更新した伊勢神宮(三重県伊勢市)のほか、来年11月には「ESDユネスコ世界会議」の名古屋開催、来年度末には北陸新幹線延伸開業、28年に徳川家康没400年、日本初のレゴランド開園(名古屋市)…と、実は観光資源や集客力のあるイベントにも事欠かない。

 昇龍道プロジェクトの推進協議会会長を務める三田敏雄・中部経済連合会会長は、「リピーターの増加につなげたい。東京五輪の観光客を中部圈に取り組む方策も考えたい」と意気込む。見据えるのは、39年のリニア中央新幹線の東京~名古屋間の開業後の首都圏からの観光客取り込みだ。

 だが、こうした追い風に安閑と構えているわけにはいかない。課題もある。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの内田俊宏エコノミストは、「首都圏や関西圏と比べ、製造業で稼いできた中部圈は『観光で稼ごう』という意識が低い」と指摘。さらに「製造業の海外展開や日本の少子高齢化の進行を考えると、これまでのような製造業一本で稼ごうという発想ではダメだ」と強調する。

 そこで必要なのは、エリア内の消費を増大させる誘因になる「アジア地域を主体とした海外の富裕層を取り込むこと」だ。旅行中の消費額が高い中国人、そしてショッピング目的の訪日旅行需要が拡大を続けている台湾・香港に加え、富裕層が増え始めている東南アジアをターゲットとしている昇龍道プロジェクトは、最適なターゲットに照準を合わせているといえる。

 だが、「もう一度行きたい」と思わせるのはやはり、人々のあたたかな心。まずは「お・も・て・な・し」の意識改革が、プロジェクトの成否を握るカギとなりそうだ。(佐久間史信)

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