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日本車勢、不況の欧州で模索続く 激しい値引き合戦、回復基調も収益性低く

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日本車勢、不況の欧州で模索続く 激しい値引き合戦、回復基調も収益性低く

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欧州自動車市場  欧州自動車市場に薄日が差してきた。今年に入り欧州経済にやや勢いが出始め、新車販売が回復しているからだ。4日に開幕したジュネーブ国際自動車ショーで各社が披露したのは、販売促進につなげたい実用的な小型車や世界的に人気のスポーツ用多目的車(SUV)。近い将来の市場投入を見据えたモデルだ。ただ欧州の失業率は依然として最悪の水準だ。ウクライナ情勢も予断を許さない。今後の販売に不透明感が漂うだけに、各社の販売戦略が問われる。

 相次ぎ小型車投入

 「年末に向け回復していく。ただ米国、中国と違い、回復は緩やかな曲線を描く」

 日産自動車のアンディ・パーマー副社長は欧州市場をこう分析する。

 自動車市場調査会社JATOによると、欧州30カ国の自動車販売台数は2007年の1600万台をピークに減少の一途で、昨年は前年比1.7%減の約1235万台に落ち込んだ。

 ただユーロ圏の実質域内総生産(GDP)が13年4~6月期に7四半期ぶりに前期比プラス成長に転じると、自動車販売も徐々に回復基調となり、今年1月の販売は前年同月比4.9%増の96万5406台と5カ月連続で前年実績を上回った。日本勢もトヨタ自動車が28.5%増の5万4427台となるなど販売は回復傾向にある。

 これを受けて自動車ショーではトヨタが「アイゴ」、スズキが「セレリオ」、マツダが試作車「ハズミ」と戦略小型車を発表。景気回復の証しとされるスポーツカーをホンダが「シビックタイプR」として展示した。

 新型SUVをアピールする姿も目立った。SUVは環境規制の高まりで車の小排気量化が進む中、「小型でも見栄えがする車」として人気を集めているためだ。日産は「ジューク」の一部改良モデルを発表した。

 「ウクライナを注視」

 販売に回復の兆しが見えるとはいえ、長引く市場低迷で値引き合戦は激しい。「スペインなどは小型車ですら40万円を値引く」(国内自動車大手幹部)とされ、販売を取り巻く環境は相変わらず厳しい。しかも地域による寒暖の差やニーズの違いがあり、シートの暖房機能や雪道仕様などにそれぞれ対応しなければならず、巨大市場とはいえ収益性は低い。

 地元・欧州勢ですら苦戦が続き、欧州2位の仏大手プジョー・シトロエングループ(PSA)は2月、中国・東風汽車からの資本受け入れを決めた。30億ユーロ(約4200億円)の増資を東風と仏政府が引き受ける。好調な独フォルクスワーゲン(VW)も欧州事業は苦戦続きで、業績を支えるのは中国など欧州を除く市場だ。

 加えて、ウクライナ南部クリミア半島の実効支配を強めるロシアの動き次第では、ロシアへの経済制裁なども予想される。「現在のところ販売への影響はないが注視していく」(富士重工業の池田智彦専務執行役員)と新たな不安要因も抱える。

 それでも日本勢が欧州市場から撤退しないのは「新興国での販売力を高めるためのブランド力の維持と、欧州勢のトレンドや環境対応の情報を収集するため」(自動車大手幹部)。

 ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表は「欧州は難しい市場。ハイブリッド車販売に特化するなど割り切った戦略を取り、少ない販売台数の中で存在感を高めるべきだ」と指摘する。「円安ユーロ高のメリットを生かし輸出対応の拡大などを検討する必要がある」との声も聞かれる。欧州市場での規模拡大に向けた模索は続きそうだ。(ジュネーブ 飯田耕司)

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