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地域通貨と一体、幅広い支持で進化 イオンの電子マネー「WAON」

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地域通貨と一体、幅広い支持で進化 イオンの電子マネー「WAON」

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店頭に置かれたワオンの決済端末機。複数の電子マネーに対応しているのが特徴だ  ■【ビジネスのつぼ】地域通貨と一体、幅広い支持で進化

 イオンの電子マネーカード「WAON(ワオン)」の累計発行枚数が今年前半、4000万枚を超える。携帯電話用のアプリやクレジットカード一体型、地域限定カードなど、発行形態も多様化。さらに商店街のポイントカードと連携し、地域通貨としても活用するなど、社会インフラとしての展開が幅広い支持を得ている。

 “脱専用”で利用者急増

 レジで端末にICカードをかざすと、かわいい犬の鳴き声が聞こえる-。イオングループのスーパーの店内では当たり前の光景だ。

 イオングループが電子マネーカードを登場させたのは、約7年前の2007年4月のことだ。レジの前で1円単位で小銭を探すのに手間取り、後ろに並んでいる人から冷ややかな視線を浴びた経験を持つ人は少なくない。イオンは「レジでの決済を迅速かつ簡単にできる方法があれば、顧客満足が高められるのではないか」(上山政道・イオンリテール電子マネー推進本部本部長)と考えたのだ。

 電子マネーをめぐっては、01年にサービスを始めたソニー主導の「Edy(エディ、現・楽天Edy)」やJR東日本の「Suica(スイカ)」などが先行していた。

 “後発組”となったイオンは、電子マネーの決済端末機に着目した。当時の端末機はそれぞれの電子マネー専用だったが、イオンは競合する複数の電子マネーに対応した端末機を開発。これをイオングループの店舗に設置したほか、牛丼チェーンの吉野家やファミリーマート、ビックカメラなど、業種業態を問わず加盟店を増やしていった。加盟店にとっては、ワオンのメーンユーザーである女性客の来店増や、店に置く釣り銭が減らせるなどのメリットがある。

 この戦略が功を奏し、利用者が爆発的に増加。14年1月末現在の累計発行枚数は3840万枚に達し、利用可能な端末機は自販機や携帯型端末を含めて約17万5000カ所に及ぶ。発行枚数は「14年前半には4000万枚を超える」(イオン)見込みで、スイカの4588万枚(14年2月末現在)が視野に入る。上山本部長は「さまざまな企業などとの提携により、ワオンが幅広く使える世界を作ることを優先した」と話す。

 ワオンの“派生サービス”にも取り組んだ。07年11月には携帯電話を使った「モバイルWAONワオン」を開始したほか、対象年齢を55歳以上に限定した「G.G WAON」を投入。他の電子マネーの年代別構成比では「30代からの層が最も多い」(イオン)という定説を覆し、ワオンでは50代以上が48.9%と最も多くなった。

 買い物以外でもポイント

 さらに、ワオンの持つインフラを地方で展開する動きも始まっている。09年6月には、香川県の地域ICカード「めぐりん」とワオンを一体化した「めぐりんWAON」を発売。「めぐりん」は商店街での買い物だけでなく、地元プロスポーツチームの観戦、ボランティア活動などでもポイントがたまる。今回、イオンとの提携を契機に、高松市郊外にあるイオン店舗と同市内の商店街をシャトルバスで結ぶなど、買い物客の利便性向上につながっている。

 ただ、めぐりんWAONは、ためた「めぐりんマイル」から「ワオンポイント」への交換はできない。1999年に国の景気対策の一環として全国の自治体が発行した「地域振興券」で、その大部分が地元商店街ではなく、大手流通業で使われたからだ。イオンの上山本部長は「自由にポイント交換ができれば、めぐりんマイルが地域通貨としての役割が果たせなくなる」と説明する。

 イオンはかつて郊外に大型ショッピングモールを次々と開店させ、「中心市街地の空洞化を招いた」との批判を浴びた。その後、2006年の「まちづくり3法」の改正で、郊外での大型店舗の出店が難しくなったことや、人口の都心回帰が進んでいる。

 「めぐりんWAON」は、電子マネーを仲介役として、大手流通業と地域の商店街との共存共栄を図った成功事例ともいえる。進化した電子マネーは流通の新たな世界を切り開こうとしている。(松村信仁)

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