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GM迷走、大量リコールで“危険水域” 崩壊する信用、業績、組織
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米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の大量リコール(回収・無償修理)問題の出口が見えない。雪だるまのように膨れ上がるリコール台数は全世界で1500万を突破。取引先離れも進み、業績は危険水域に近づいている。
追い打ちをかけるように、当局や議会はGMの過失をあぶり出そうと追及を強め、GM社内もキーマンとされる調査担当者の不可解な異動が相次ぐなど動揺している。騒動は底なし沼の様相を呈し始めた。
日本ではあまり報じられていないが、米自動車業界で最近発表されたあるリポートが波紋を広げている。
米調査会社プランニング・パースペクティブが米自動車部品サプライヤー(供給業者)を対象に毎年行っている調査のことだ。それによると、完成車メーカー上位6社を対象にしたイメージ調査でGMは最下位に沈み、2008年から最下位が「指定席」だったクライスラーが5位に浮上したのだ。
GMは「信頼感全般」、「コミュニケーション能力」といった主要項目のすべてで最低評価をつけられた。ちなみにトップはトヨタ自動車、2位はホンダと日本車勢が占めた。
GMは5月日に世界で240万台超のリコールを発表。同社が今年実施したリコールは延べ1500万に達した。これは09~10年にトヨタがやはり品質問題で実施した大量リコールも上回る規模で、米自動車業界を代表するGMもかつてトヨタがはまった「危険水域」に突入しつつある。
GMの14年1~3月期決算は、最終利益が前年同期比85・5%減の1億2千万ドルと大幅減益を余儀なくされた。リコール問題で巨額の対策費の積み増しを迫られ、利益がほぼ吹き飛んだ。4~6月期もリコール関連費用は4億ドルと、当初見通しの倍に達する。
肝心のリコール問題の究明も“迷走”している。
リコールの主な要因とされる点火スイッチの不具合について、GMはメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)が「新しく生まれ変ったGMの姿を示す」と号令を掛け、徹底的な社内調査を進めている。
ところが、米メディアによると、その調査で重要な役割を担う幹部が4人も、退社あるいは配置転換されていたというのだ。とくに調査を指揮していたトップエンジニアのジム・フェデリコ氏が5日付でひっそりと退職していたことは社内外に波紋を広げている。米道路交通安全局(NHTSA)との窓口的な役目を務めていた製品調査部門の幹部も別部門に異動した。
GM広報によれば、フェデリコ氏の退職は本人の希望で、「今回のリコール問題とは関係がない」というが、日系自動車メーカー関係者は「トップが年初に交代したこともあり、社内が動揺しているようだ」と指摘する。
一方で、GMのメディアに対するガードは堅く、米紙ニューヨーク・タイムズは、GMの法務部門などの幹部へのインタビューを同社が拒んだと不満げだ。
当局や議会も“GM包囲網”を狭めている。4月の公聴会で、GMが点火スイッチの不具合を10年以上前に把握しながら放置していた点に、「GMは責任ある企業なのか」と罵声がバーラCEOに浴びせられた。
真相究明のため、点火スイッチの設計者の証言を求めるべきだとの声もあり、元連邦検事のブルメンソール上院議員は、現場レベルの従業員の聞き取り調査を行う考えも示している。
NHTSAのほか、証券取引委員会(SEC)やニューヨークの連邦地検が調査に乗り出したことも判明するなど、政府や州レベルで各種機関がGMの過失や組織的な隠蔽をあぶり出そうと追及を強めている。
GMに質問状を送付していたNHTSAは今月、GMの回答が不十分として3500万ドルの制裁金を科した。リコール問題での制裁金としては過去最大で、フォックス運輸長官は「安全を脅かす欠陥がありながら政府に報告を怠れば、容赦しない」とすごむ。
GMも「防戦」に懸命だ。製品開発で品質管理を強化する新組織を立ち上げる方針で、技術部門の再編も発表。縦割りを排し、技術面でも開発段階から顧客の反応まで横断的に検証する体制を整えるという。
だが点火スイッチの不具合がなぜ長期間放置されたかや、組織的隠蔽の有無については、バーラ氏が「社内調査結果を待つ」として、いまだ判然としない。
自動車の欠陥で死亡したドライバーの遺族や関係者による訴訟も相次いでいるが、GMは09年の経営破綻前に販売した車については訴訟を取り扱わないよう、裁判所に申し立てている。しかし、米メディアによると、遺族らは「責任逃れ」だと反発している。
米メーカーでは5月にフォード・モーターが計75万台超のリコールを発表し、準備金を積み増してGM同様減益決算を強いられた。「GMショック」は業界全体をむしばみつつある。
GMの社内調査は早ければ5月末にも完了する見通しで、結果次第ではリコール問題は重要な局面を迎えそうだ。