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大型2次電池、ソニーなど積極投資 EV普及は苦戦…将来性は不透明

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大型2次電池、ソニーなど積極投資 EV普及は苦戦…将来性は不透明

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大型2次電池の世界需要予測  大型2次電池の本格的な需要拡大を見込み、パナソニックやソニーなどの電機各社や住友化学などの素材メーカーが事業の強化に乗り出している。

 ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)などの車載向けに加えて蓄電設備向けも伸び、2025年には世界市場の規模が10兆円近くに成長するとも予測される中、韓国など海外勢も含めた競合他社に先行するのが狙いだ。一方、三菱重工業がEV向け電池の生産から撤退するなど受注競争は激化しており、大型投資のリスクも見え隠れする。

 「出資の分担などの詳細は(EVメーカーの米テスラ・モーターズと)協議中だが、段階的な投資を考えている」

 パナソニックで自動車関連事業の社内カンパニー社長を務める伊藤好生専務役員は5月23日、大阪市内で報道陣に対し、テスラが米国で計画しているリチウムイオン電池工場への投資は、需要の伸びをにらみながら順次進める考えを強調した。

 1000億円超の工場

 総額1000億円以上ともされる新工場をめぐり、パナソニックは既にテスラと趣意書を交わし、17年の稼働に向けて協議を重ねている。

 パナソニックは13年度に1300億円だった車載電池事業の売上高を18年度に4500億円に拡大する目標を掲げており、テスラの新工場で生産する電池は目標達成の一翼を担う。

 これに対し、ソニーは大規模蓄電システムにも力を入れる。一時は売却も検討していた電池事業を、中核事業に据える方針に転換。今月2日にはカナダ最大の電力会社ハイドロ・ケベックとの合弁で、風力発電用などの蓄電システムを開発する「エスタリオン・テクノロジーズ」を発足させた。平井一夫社長兼最高経営責任者(CEO)は「中小型で培った技術を生かし、電力インフラ向けも狙っていく」と強い意欲をみせる。

 NECも、中国企業傘下の電池メーカーから電力の安定供給を担う蓄電システム事業を5月中旬に買収、大型電池の収益拡大を目指す。

 各社が投資を加速させているのは、大型2次電池の需要拡大が確実と見込んでいるからだ。調査会社の富士経済は25年の世界市場規模は13年比で5.9倍の9兆8570億円と予測している。

 日本勢はノートパソコンや携帯電話向けなど小型2次電池で先行。08年には世界で4割強のシェアを占めたが、韓国や中国勢の追い上げで近年は1割余りに低下したとみられる。このため「求められる技術や性能が高く日本企業の力が発揮できる」(日本政策投資銀行)という大型電池は、日本勢がシェアを握る可能性を持つ有力分野だ。

 電池の部材を供給する素材メーカーも事業を強化。住友化学は高温に強い絶縁材の生産能力を15年春までに現在の2.3倍に増強し、パナソニック向けに納入する。東レは3月末、電池素材の販売拡大に向け、電池メーカーのエリーパワー(東京都品川区)に出資した。

 もっともEVの普及は国内外で当初見込みより遅れている。約100億円をかけてリチウムイオン電池工場を整備した三菱重工は受注に苦戦し生産撤退を4月に発表。トヨタ自動車がEVより燃料電池自動車(FCV)の開発に軸足を置くなどEVの将来性には不透明な面もある。

 SMBC日興証券の渡辺洋治シニアアナリストは「車載用電池では材料面で技術革新を図り、コスト競争力を保ちながら高性能の製品を提供できるかが重要。(電力貯蔵など)より大規模な分野は割高なコストなど課題も多い」と指摘している。(那須慎一)

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