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日本アニメ・漫画の「海賊版」対策本腰 15社、垣根越えて連携

ニュースカテゴリ:企業の情報通信

日本アニメ・漫画の「海賊版」対策本腰 15社、垣根越えて連携

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 ■集中的に削除要請、正規サイト誘導…

 インターネット上で不正に流通している日本のアニメや漫画などの「海賊版」に対し、出版社やアニメ制作会社など15社が初めて業界を超えて連携し、本格的な対策に乗り出した。外国の海賊版サイトにデータの削除を要請するとともに、正規の方法で鑑賞してもらうための誘導や啓発を行うことで、ビジネスとしての「正常化」を目指す。(本間英士)

 昨年7月に発足した「マンガ・アニメ海賊版対策協議会」は先月、海賊版を提供する中国や米国、欧州など海外の約100サイトに対し、約5カ月間かけてメールなどで削除要請を集中的に行う「MAG PROJECT(マグプロジェクト)」を開始した。

 対象は動画投稿サイトや、漫画をネット上で読める「オンラインリーディングサイト」、海賊版のデータをため込む「ストレージサイト」などで、聞き入れられない場合は現地の裁判所への提訴など法的措置も検討する。作品は海外でも人気の「ONE PIECE(ワンピース)」「名探偵コナン」など、計約580作を想定している。

 同協議会には、東映アニメーション▽スタジオジブリ▽KADOKAWA▽講談社▽小学館▽集英社-など計15社が参加し、CODA(コンテンツ海外流通促進機構)が事務局を務めている。

 海賊版というと、以前は複製された漫画本やDVDが主だったが、現在の本流はネットだ。海賊版が海外のネット上に本格的に流れ始めたのは、ブロードバンドが普及した2006(平成18)年ごろ。大容量の通信が可能になったことや、米国などで起きた日本のアニメブーム、ユーチューブなど動画投稿サイトの登場などが背景にあるとみられている。

 これまで日本の出版社などは、海賊版サイトに対し個別に削除要請を行ってきたが、効果は上がっていない。CODAの永野行雄常務理事は「海賊版サイト数が増え、形態も多様化している。個別の対応では限界がある」と話す。

 15社の連携の背景には、海外でのアニメ・漫画の人気は高まる一方で、その売り上げが日本の制作側に還元されていないという実情がある。日本動画協会の調査では、平成24年の日本のアニメ制作会社の海外売上高は144億円で、直近のピークである17年(313億円)から半減した。経済産業省の25年度の調査では、アニメ・漫画の海賊版被害は米国だけで約2兆円に上ると推計している。経産省文化情報関連産業課の小松原繁課長補佐は「海賊版の存在が海外にビジネス展開するうえで、大きな障害になっている」と話す。

 収益を上げるには海賊版対策だけでなく、正規の配信を行うサイトへの誘導が必要だ。CODAは話題作の正規版を手軽に見つけられる、国内外向けリンク集サイト「Manga-Anime here」を先月末に開設した。永野氏は「業界を超えて海賊版対策を行うことで、これまでとは違う『本気さ』を示すとともに、制作側がきちんと収益を得られる流れを作りたい」と話している。

 ■流通は国内から?希薄な「罪の意識」

 ネット上に無数にある海賊版は、一体誰が流しているのか。CODAの永野常務理事は「国籍は分からないが、日本在住の人が流しているのは間違いない」と話す。理由はアップロードされる時期の早さだ。アニメは放送の数時間後、漫画も雑誌・単行本の発売から時間を置かずにネットに流される。そこに各国のアニメファンらが自前で翻訳した字幕がつけられ、世界中のさまざまな海賊版サイトに拡散していく。

 権利者に無断で作品をアップロードしたり、ダウンロードするのは著作権法で禁止されている。違法行為が後を絶たない理由について、永野氏は「『周りもやっている』などと罪の意識が希薄なのではないか」と推測する一方、「現状では『違法視聴は悪いことだ』と教える環境があまり整っていない」と教育の問題も指摘する。

 ネットユーザーの一部には「海賊版があるから海外でもアニメ・漫画人気が高まった」という意見もある。永野氏は「そういう側面もあるのは事実」としつつも、「正当な対価を権利者に払うことが、次の作品につながる。新たな作品を生み出す土壌が弱れば、業界だけではなくファンにとっても大きなマイナスになる」と話している。

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