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ホンダの超小型EV、阿蘇・天草を快走 熊本県が貸し出し社会実験

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ホンダの超小型EV、阿蘇・天草を快走 熊本県が貸し出し社会実験

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阿蘇の山並みをバックに快走するホンダの超小型EV「MC-β」  1~2人乗り超小型電気自動車(EV)が、熊本の道を快走している。普及を目指す「熊本県小型電動モビリティ導入促進協議会」が、阿蘇や天草など熊本を代表する観光地3カ所で、超小型EVを観光客に貸し出す社会実験を始めた。EVをはじめ超小型モビリティ(乗り物)導入は欧州が先行するが、日本での普及は今ひとつ。まったく新たな乗り物を使った観光ルート開拓など、超小型EVが秘める可能性を探る実験として注目を集める。(谷田智恒)

 実験には、ホンダが開発した超小型EV「MC-β」が使われている。全長約2・5メートル、高さ約1・5メートルとコンパクトな大きさで、リチウムイオン電池にためた電気を使ってモーターを駆動する。大人2人乗り。充電は最短3時間程度。最高速度70キロで、約80キロメートルの走行が可能という。運転には普通自動車免許が必要となる。

 こうした超小型EVは、排ガスを出さず、低炭素社会へ貢献する。また、小回りが利き、子育て世代や高齢者の移動支援、観光客の足としての活用が見込まれる。国土交通省は平成24年度から、自治体による導入取り組みへの支援事業を進めている。

 ホンダは熊本県大津町にバイクを中心とした工場を構える。25年2月、県とホンダグループ、7市町が県小型電動モビリティ導入促進協議会を設立した。同年6月に、県とホンダが超小型EVを使った社会実験に関する包括協定を締結し、県民向け試乗会や県公用車として利用してきた。

 今回、熊本県は国交省から補助も受け、「MC-β」12台を使った社会実験を始めた。今年7月から阿蘇市と芦北町で、8月9日から天草市でレンタカーとして貸し出しを始めた。

 観光地における近距離の移動手段としての可能性や、新たな魅力創出につながるか、効果を検証するという。

 このうち阿蘇市では、JR阿蘇駅構内にある駅レンタカー九州阿蘇営業所に5台を配置した。走行エリアは阿蘇地域に限定した。レンタル料金は1時間1千円で、利用時間は1回あたり最大5時間としている。ただし、料金は3千円を上限とする。

 県南部の芦北町では御立岬公園管理事務所に3台を置いた。園内キャンプ場や宿泊施設の宿泊者を対象に、無料で貸し出している。

 天草市では本渡レンタカーを事業者として天草空港や本渡港などで4台を貸し出し。走行エリアは天草一円で、レンタカー料金は6時間3990円。

 本渡レンタカー社長の倉田泰氏は「ガソリン代もかからず、利用者からは『チョイ(少し)乗りに最適』という声が多い」と語った。

 観光客の評判は上々な超小型EVだが、課題は走行距離だ。天草は観光エリアが広く、訪問先での充電が必要となる。倉田氏は「一度の充電での走行距離が60~70キロでは短すぎる。せめて100キロぐらいまで、距離が長くなれば、もっと普及するだろう」と指摘した。

 超小型EVは、国内外の自動車メーカーが、競い合う新たな分野だ。

 普及台数をみると、ドイツをはじめ環境保護への意識が高い欧州が先行する。二輪車と同じ枠内で取り扱いをされており、専用道路や充電設備などのインフラ整備も進む。仏ルノーやドイツのメルセデス・ベンツなど欧州大手は超小型EVに参入済み。これに対し、ホンダなど日本メーカーも欧州市場への参入を目指している。

 一方、国内の超小型モビリティの年間販売台数は4千台と、欧州の1割程度に過ぎないという。

 今回、熊本での実験には、超小型EVの国内普及の突破口としたい狙いもある。

 観光地での社会実験は9月30日まで実施し、その後は子供の送迎や、高齢者の買い物などを想定し、都市での新たな社会実験も計画する。

 県産業支援課課長補佐の久保田健二氏は「利用者にはアンケートに協力してもらい、超小型EVの使い勝手のほか、観光振興や地域活性化の可能性なども調査する。超小型EVの関連産業の振興も考えていきたい」と語った。

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