SankeiBiz for mobile

「羽田新線構想」乱立する理由 五輪後見据え…建設費確保や用地買収など課題

ニュースカテゴリ:企業のサービス

「羽田新線構想」乱立する理由 五輪後見据え…建設費確保や用地買収など課題

更新

 東京都心と羽田空港とのアクセスを改善する鉄道の新線構想が相次いで浮上している。JR東日本は東京、新宿、新木場の各駅から羽田へ乗り換えなしで行ける「羽田空港アクセス線構想」を発表。東京急行電鉄の蒲田駅と京浜急行電鉄の蒲田駅を結ぶ新空港線「蒲蒲線」構想なども検討が進む。東京五輪が開かれる2020年をにらみ、増える訪日外国人客や海外への旅行客の需要を取り込む狙いで、実現すれば都心の鉄道網が大きく変わりそうだ。

 「羽田への輸送力を抜本的に大きくできるメリットを持っていると思う」。羽田空港アクセス線構想について、JR東の冨田哲郎社長は3日の定例会見でこう強調し、実現に意欲を示した。

 東京、新宿、新木場の各駅から羽田への所要時間は20分前後と、現在の半分程度に短縮。全面開業は東京五輪開催後の20年代半ばとなる見通しだが、使われていない既存設備が活用できる新木場のルートは6年後に迫った五輪前の暫定開業が可能か検討している。

 現在、羽田への鉄道アクセスには京急とJR東傘下の東京モノレールがあり、両者で羽田利用者の旅客輸送の約6割を握る。ただ羽田では航空機の東京都心上空の飛行が認められるなどすれば、国際線を中心に発着枠の拡大が見込まれる。

 国土交通省は地元理解を取り付けるため、自治体や航空会社を交えた協議会を8月下旬に初めて開催。発着枠が拡大し訪日客が増えれば、京急と東京モノレールだけでは対応しきれなくなる恐れが指摘されていた。

 新線構想はほかにもある。東急蒲田駅と京急蒲田駅を地下新線で結ぶ「蒲蒲線」構想は、大田区などが実現へ国や鉄道事業者への働きかけを強めている。国交省は、東京駅の丸の内側に地下駅の新東京駅をつくって都心から羽田、成田両空港に乗り換えなしで行ける「都心直結線」構想も検討している。

 最低でも1000億円規模…課題は建設費確保

 一方、現在は浜松町駅を発着する東京モノレールにも、約3キロ離れた東京駅への延伸構想が表面化。

 JR山手線の西側に並行して高架柱を建て、高い位置にレールを新設、JR東海道線の東京駅上空にホームを設置するものだ。東京-羽田間は乗り換えて28分かかるが、延伸が実現すれば乗り換えがなくなり、22分に短縮されるとしている。

 ただ、すべての構想が実現するかは未知数といえる。ここへきて羽田をめぐる新線構想が乱立してきたのは、旅客需要の取り込みを狙う鉄道事業者間の権益争いという側面もあるからだ。

 ある証券アナリストは「例えば都心直結線ができると、JR東にとっては、傘下の東京モノレールや成田空港への鉄道アクセスである成田エクスプレスの需要を奪われるおそれがある。積極的に新線構想を打ち上げ、牽制(けんせい)している面もあるのでは」と指摘する。

 また、いずれの新線構想も、建設費の確保が大きな課題となる。JR東は羽田空港アクセス線構想で約3200億円を見込んでいるが、都心から羽田への所要時間がほぼ半減する点を訴え、国や自治体の支援に期待を寄せる。都心直結線は数年前に4000億円程度と試算され、他の新線構想も1000億円規模と、どれも額は小さくはない。用地買収も容易でなさそうだ。

 国交相の諮問機関、交通政策審議会は5月、首都圏の中期的な鉄道網整備について議論を開始。羽田への鉄道アクセスについては小委員会を設置して自治体や鉄道事業者からの聞き取りをしており、14年度中にも中間報告をまとめるとみられる。

 国の玄関口である国際空港と都心との所要時間を短縮することは、日本の国際競争力の強化につながってくる。羽田は都心からの距離が20キロ弱と比較的近いが、現在の京急や東京モノレールでは東京駅などの主要駅から乗り換えが必要なこともあって、移動に時間がかかり、地の利を生かし切れていない。これに対し、香港やソウル、ロンドン、パリといった海外の主要都市の場合、乗り換えなしで行き来できる。アジアで都市間競争が激しさを増している中、空港アクセス改善は喫緊の課題だ。

 新線構想はいずれも、東京五輪の開催決定を受けて整備の機運が高まっている。ただ、都心と羽田との鉄道アクセス改善は「五輪だけでなく、その後に東京が国際的な都市として発展していく上でとても重要な課題」(JR東の冨田社長)といえるだけに、五輪後も見据えた整備のあり方が鍵となりそうだ。(森田晶宏)

ランキング