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「4K」本格始動も民放局から困惑の声 『視聴者目線』考え直す時期
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今月開かれた家電・IT見本市「CEATECJAPAN(シーテック・ジャパン)」では、各メーカーによる4Kテレビの展示も目立った=千葉市(宮崎瑞穂撮影) ハイビジョンより高精細な映像が楽しめる4Kテレビ向けのサービスが本格化してきた。光回線を利用した「ひかりTV」は今月27日から4K番組の有料配信を始め、衛星放送の「スカパーJSAT」は来年3月、CSで有料チャンネルを開設。4Kテレビの普及に期待が集まる一方、事業化や番組制作に当たっては手探り状態も続いている。(三品貴志、本間英士)
「ひかりTVなら衛星放送やケーブルテレビ(CATV)より早く4K番組を楽しむことができる。十分な通信速度や画質、安全性も確保できている」
ひかりTVを運営するNTTぷららの板東浩二社長は今月3日の会見で、光回線を通じた4Kテレビの浸透に期待を込めた。
ひかりTVの4Kサービスは、見たい番組を好きなときに視聴できるビデオ・オン・デマンド(VOD)形式。映画や独自コンテンツに加え、NHK、TBS、テレビ東京も番組を提供し、今年度末までに200本以上を配信予定だ。
ひかりTVの会員数は9月末時点で293万人と、この4年で3倍近く増加。同社には、いち早く新サービスに取り組むことで、地上波、衛星放送、CATVに続くテレビの新たな選択肢として存在感を高める狙いもあるようだ。番組を提供する民放幹部からは「4Kサービスの“主戦場”は当面、VODになるのでは」との推測も出ている。
一方、テレビ局や家電メーカーなどでつくる「次世代放送推進フォーラム」は現在、スカパーJSATの衛星を使ったCS「チャンネル4K」で4K試験放送を行っている。放送時間はこれまで1日6時間だけだったが、今月から平日は正午から7時間、土日祝日は午前10時から12時間にそれぞれ拡大。今後は主要CATV局も同チャンネルに地域番組を提供するなどラインアップも充実させる。
試験放送の視聴には「スカパー!プレミアムサービス」対応のアンテナとチューナーなどが必要。スカパーJSATは来年3月、プレミアムサービス内に新たに2つの4K専門有料チャンネルを開設する予定だ。試験放送も視聴できるという“メリット”も生かしつつ、同社はスムーズな会員獲得に期待を込める。
4Kサービスが展開されるのは当面、配信やCS、CATVが中心になるが、総務省は今年8月、BSでの4K試験放送開始を平成32年から28年に前倒しすることを決定。具体的なチャンネルや放送体制は未定だが、2020年東京五輪・パラリンピックを前に対応サービスを充実させることで、4Kテレビの普及を図る狙いがある。
ただ、半ば「国策」として対応のスピードアップを求められた民放局からは困惑する声も上がっている。在京キー局幹部は「地デジ化で視聴者の多くがテレビを買い替え、テレビ局も機材や設備を刷新したばかり。4K番組には現在の倍以上の制作費がかかり、コンテンツの普及にも時間がかかる」と明かす。
各局はドラマやスポーツなどの番組制作に取り組んでいるが、「どういうジャンルが4Kに向いているのか、撮り方も含めて研究している状況」(民放幹部)というのが現状だ。フジテレビの亀山千広社長は「中には『大画面だと疲れる』という視聴者もいる。本格的な普及を目指すなら、国も制作者も『視聴者目線』を考え直す時期に来ている」と話している。