SankeiBiz for mobile

LCC、エアアジア再参入で5社“空中戦” 運賃設定や国際線進出がカギ

ニュースカテゴリ:企業のサービス

LCC、エアアジア再参入で5社“空中戦” 運賃設定や国際線進出がカギ

更新

 格安航空会社(LCC)の競争がいよいよ新たなステージに突入する。4社がしのぎを削ってきた国内市場に来年、アジアの“空の風雲児”が率いる会社が再参入するためだ。この会社はかつて、ANAホールディングス(HD)と組んで日本市場に打って出たが、けんか別れした揚げ句、あえなく撤退。今回は楽天などと組んで虎視眈々(たんたん)とリベンジを狙っている。既存4社の優勝劣敗も徐々に進んでおり、2015年はLCC戦争が激化しそうだ。

 「台風の目」予感

 日本の空の“台風の目”になりそうな気配だが、受けて立つ既存4社の勢力図を確認しておく。

 順調な飛行を続けているのが12年に関西空港を拠点に就航したピーチ・アビエーションだ。現在の筆頭株主はANAHD。

 かつては人気アイドルグループ「AKB48」の元メンバー、篠田麻里子さんを公式客室乗務員(CA)に指名するなど、従来の型にこだわらない経営で知られ、14年3月期に国内LCCとして初めて黒字化を達成した。同社幹部は「ピーチのビジネスモデルが事業として成り立つことを証明した」と自信を深める。

 一方、低空飛行を余儀なくされているのが、ピーチと同年に成田空港を拠点に就航したジェットスター・ジャパンだ。

 これまで延べ600万人以上の利用客を運んだが、赤字続きで14年6月期には111億円の最終赤字を計上。財務基盤を強化するため今年11月、大株主である日本航空と豪カンタス・グループから最大110億円の追加出資を受けることが決まったばかりだ。

 鈴木みゆき社長は今月3日の事業戦略発表会で「今後、前を向き、ステップアップしながら2年以内の黒字化を目指していきたい」と決意を示した。

 その切り札とにらむのが、関空を成田に次ぐ第2の拠点空港とする取り組みと国際線への参入だ。関空の第2拠点化は遅れに遅れていたが、6月にようやく始まった。同社初の国際線となる関西-香港線は来年2月28日に就航する。鈴木社長は、香港以外への就航や成田からの国際線運航にも前向きで、「機材の稼働率が(より)高まる。黒字化達成の目標に大きく貢献する」と強調する。

 そもそも国内でLCCの本格参入が起きたのは12年。同年3月のピーチを皮切りに、7月にジェットスター、8月にエアアジア・ジャパン(現バニラ・エア)が相次ぎ就航、「LCC元年」ともてはやされた。さらに今年8月には、国内4社目となる中国系の春秋航空日本が成田発着路線に就航した。

 旅客数も伸びている。国土交通省が11月に発表した国内のLCC利用状況に関する調査結果によると、関西-福岡など主な9路線の昨年の利用客数は計636万人で、11年と比べ2.4倍に増加した。売りは何と言っても、その「安さ」だ。

 安さゆえの落とし穴

 しかし14年には安さゆえの落とし穴が浮き彫りになった。航空会社にあってはならない「パイロット不足」だ。病欠や採用の不調でピーチは5~10月に約2000便、バニラも6月に154便の大量欠航を余儀なくされた。

 ジェットスターは、関空での機体整備の体制づくりの遅れで増便が延期となり、6月上旬に予定していた増便分の101便が欠航。春秋航空日本も、当初は5月末を予定していた就航時期を2度にわたり延期した。国内LCCは文字通り“総崩れ”の様相を呈した。

 ■国際線進出 訪日客取り込みが重要

 懸案だったパイロット不足はピーチ、バニラとも病欠者の復帰や追加採用などで確保し解消した。しかし、大手旅行会社首脳が「国内LCCの最大の課題は安定運航」と語るように、外部からは厳しい声が聞こえてくる。

 日本では、公共交通機関が定時で動くのは当たり前という空気が強い。安定運航の体制を構築し、利用客の信頼を獲得する上で、各社がこなすべき宿題は少なくない。こうした中、来年は国内LCCがもう1社増え、5社体制になる予定だ。

 新たに参戦してくるのは、アジア最大のLCCであるマレーシアのエアアジア。既に楽天などと異業種連合を組んで新生エアアジア・ジャパンを設立。中部空港を拠点とし、来年1月にも航空運送事業の許可を国交省に申請するとみられる。

 エアアジアはかつて、ANAHDと合弁で旧エアアジア・ジャパンを設立し運航していた。だが経営方針をめぐる対立や業績不振で13年に合弁を解消、日本市場からいったん撤退するという苦杯をなめた。

 エアアジアの最高経営責任者(CEO)は“空の風雲児”と称されるトニー・フェルナンデス氏。01年に経営破綻状態だった同社をたった25セント(約30円)で買収し、わずか1年で立て直した。そもそも格安料金で航空機を飛ばすLCCという概念は、同氏が編み出したと言われる。

 フェルナンデス氏は日本の航空市場について「常にアジアの中心であり続ける」と、その潜在能力を高く買っており、今回は満を持しての再挑戦となる。惨敗に終わった旧エアアジア・ジャパンが「パート1」とすれば、新生エアアジア・ジャパンは「パート2」となる。フェルナンデス氏は「『パート3』はない」と不退転の決意だ。

 国内LCCが5社体制となる15年の展望について、SMBC日興証券の板崎王亮シニアアナリストは「国内線だけの運航で利益を得ていくのは難しくなる。国際線にいかに進出し、増加する訪日外国人客らを取り込めるかが重要になる」と指摘。その上で「ちょっとした戦略の違いで収支が変わりかねない。運賃設定や路線展開、広告宣伝など多岐にわたる分野で難しいかじ取りが求められる」と予想する。

 最後に、航空業界に伝わる不吉なジンクスを紹介しよう。来年の干支(えと)は「未(ひつじ)」。未年には過去、1991年の湾岸戦争、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)拡大など航空業界に大きなダメージを与える出来事が起きている。

 激烈な競争となりそうな国内LCCにとって、15年はどんな一年になるのだろうか-。

ランキング