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MRJ、乗り越えるべき“3つの壁” 期待がかかる「日本の翼」

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MRJ、乗り越えるべき“3つの壁” 期待がかかる「日本の翼」

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MRJの受注の内訳  国産初の小型ジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」が18日、いよいよ飛行試験用の初号機を関係者にお披露目する式典(ロールアウト)を開催する。総受注数は採算ラインの下限である400機を突破。3度にわたる開発計画の延期を経て、来春に念願の初飛行を迎える。だが、「日本の翼」が安定飛行に入るまでには、乗り越えるべき“3つの壁”がある。

 4割キャンセル可能

 ロールアウトは、MRJを開発する三菱航空機の親会社で、製造を担当する三菱重工業の小牧南工場(愛知県豊山町)で開催する。MRJが最初に納入される全日本空輸のほか、政府関係者などが参加する予定だ。

 たび重なる計画延期で暗雲が立ちこめていたMRJだが、ようやく明るい光が差し込み始めてきた。

 「世界のエアラインから優れた航空機とみてもらえる。400機の大台に乗ったという意味でもありがたい」

 8月末の記者会見で、三菱重工業グループでMRJを開発する三菱航空機の江川豪雄会長は笑顔を見せた。

 国内航空会社では全日空に続き、日本航空からも32機を受注。これまで採算ラインは400~500機といわれていたが、合計の受注数が407機になった。

 それでも、手放しで喜ぶのは早い。越えなくてはならない最初の壁は、さらなる受注の積み重ねだ。

 「確定の採算ラインにはまだ届いていない」

 航空関係者は厳しい見方を示す。現在、407機のうち約4割にあたる184機は購入のキャンセルや保留が可能なオプションや購入権の契約が占める。

 MRJのような座席数100席以下で短距離を結ぶ旅客機を購入する顧客は大手航空会社より、規模の小さな地域航空会社が多い。

 中には信用力が乏しいケースもあり、「売却が決まったからといって、確実に資金回収ができるかはわからない」(金融関係者)からだ。

 事実、官民一体で推進した戦後初の国産プロペラ機「YS-11」は、リース契約していたペルーのランサ航空が破産。機体を債権者に差し押さえられるという事態に陥った。

 最近でも、スカイマークが業績悪化で資金繰りが難しくなり、エアバスに発注していた大型旅客機の購入を断念した。

 このため、三菱航空機の江川会長は「全世界満遍なく営業する。東南アジアもラテンアメリカもアフリカも有望だ」と、顧客の多様化の重要性を強調する。

 現在、受注を決めた航空会社は日航を含めて6社。地域は日本、米国、ミャンマーだけ。販売拠点を設けている欧州では実績がなく、大口顧客がキャンセルした場合のリスクが高い。

 コスト抑制不可欠

 2つ目の課題は利益の確保だ。

 MRJの定価は1機47億円で、日航が発注した32機の購入額は約1500億円。ただ、日航の植木義晴社長は「いい条件で交渉できた」と“値引き”があったことを示唆した。

 購入機数などに応じて行う値引きは一般的。それでも、MRJのような小型機市場は、ブラジルのエンブラエルとカナダのボンバルディアの2強に加え、中国、ロシアの新興メーカーも参入し、競争が激しい。燃費や静音、室内空間を売りにするMRJでさえ、値引きの圧力からは逃げられない。

 「機体はエンジンなどの部品と異なり、交換や修理などの利益が見込めない」(航空業界関係者)ため、量を確保し、コストを抑える取り組みが不可欠だ。

 受注が増えたことで、三菱重工は生産能力の増強という課題に直面しているが、資金を回収できなければ、過剰設備になる懸念がある。

 3つ目の壁は、やはり、来年4~6月の初飛行、2017年4~6月の納入開始という計画を着実に実施することだろう。MRJはこれまで受注獲得に向け、実機がないハンディを抱えてきた。さらに遅れれば、キャンセルや違約金支払いの可能性が高まる。

 日本経済の新たな成長モデル期待

 そもそも、巨額の投資負担というリスクがあるにもかかわらず、三菱重工業が計画を推し進めてきたのは「事業そのものの持つポテンシャルが大きい」(幹部)からだ。その思いはメーカーにとどまらず、日航の植木義晴社長は「私自身、開発現場をみて胸が高鳴り、次世代を担う航空機だと確信した。MRJの成功は航空会社にとっても夢だ」と話す。

 民間主導のMRJが着実にビジネスとして軌道に乗ることができるか。受注活動などでは政府の後押しも不可欠だ。

 さらに部品メーカーなどへの波及効果も大きいだけに、その翼には日本経済の新たな成長モデルとして期待がかかっている。(田村龍彦)

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