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シャープが不振事業の説明会に熱心なワケ “ゾンビ化”疑う主力行

ニュースカテゴリ:企業の電機

シャープが不振事業の説明会に熱心なワケ “ゾンビ化”疑う主力行

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報道陣に初公開されたシャープ堺工場の太陽電池の生産ライン=30日午後、堺市堺区(甘利慈撮影)  経営再建中のシャープが液晶、太陽電池など不振事業の事業説明会に熱心だ。平成27年3月期は最終赤字に沈む業績予想を公表した後、主力取引銀行への資本支援要請も発覚。不振事業の分社化、売却、撤退、縮小などの観測が浮上するなか、継続を内外にアピールして先行きへの不安を払拭する狙いがあるとみられる。ただ破綻した中期経営計画に代わる計画を策定している最中。抜本的な構造改革で再建を確かなものにしたい銀行側にはリストラ対象の“延命への予防線”と受け止めもある。

 継続を宣言

 「現在、ソーラー事業をやめるとか、売却するという事実は一切無い。ご覧いただきましたようにブラックソーラー(主力製品)の生産は継続していく」

 3月30日、太陽電池パネルを生産する堺市内の工場でシャープは事業説明会を開き、向井和司常務執行役員が事業継続を宣言した。

 シャープの太陽電池事業は苦境に陥っている。ほんの1年前の26年3月期は固定価格買い取り制度を追い風にしてメガソーラー向けが好調。当時子会社だった米リカレント・エナジーの大型案件の収入もあって、営業損益は324億円の黒字を計上した。ところが、27年3月期は中国勢の安価なパネルの普及や、消費税増税後の新規住宅着工減少に伴い業績が急速に悪化。50億円の営業赤字への転落を見込む。

 太陽電池、テレビ、液晶事業の不振によってシャープは27年3月期、最終損益は300億円の赤字に転落する見通し。さらなる構造改革費用捻出のため、シャープは金融機関への資本支援要請に向けた交渉に入っており、太陽電池は不振のリストラ対象として、やり玉にあがっている。

 3月、主力取引行への資本支援要請を検討していることが発覚して以降、太陽電池は工場の売却が検討され、事業縮小や撤退の観測が強まるなか、「アフターケアを含めて『シャープ製品を買って大丈夫か』と不安がり、購買を控える動きが出てきた」(広報部)という。

 メディア向けの事業説明会は営業サイドからの強い意向で企画されているといい、観測を打ち消す狙いだった。

 説明会では22年の稼働開始以来初めて、工場の内部を公開。電極を表に置かないことで太陽光を受ける面積を広げ、発電効率を高める「ブラックソーラーパネル」の生産工程を紹介。14億円を投じて出力を高めた新製品を6月に発売する予定をアピール。これをひとつの事業継続の根拠だとした。

 火消しに躍起

 不振の液晶事業も事業説明会を2月の大阪に続き、3月には東京で開いた。液晶部門トップの方志教和専務は、液晶パネルの販売先をスマートフォン向けだけでなく、医療機関や教育機関が使用するタブレット端末向けも強化。収益力を高めるため、事業者向け商品への搭載を目指す方針を打ち出した。

 しかし、液晶パネルは国内外のライバルとの価格競争が激しく、収益を高めることは大変だ。設備投資を進めていかなければ、技術革新もおぼつかない。体力の限られたシャープには大きな負担だ。

 液晶事業を分社化し、産業革新機構に出資を求める計画も検討されている。関係者は「そうした観測を打ち消す狙いで説明会を開いた」とも打ち明ける。

 このほか、シャープの公式ホームページには、こうした事業の分離・売却、人員削減などの報道について「当社が発表したものではありません」「決定した事実はありません」とのコメントが並び、火消しに躍起だ。

 生き残り図る?

 こうした動きに対し、銀行側は穏やかではない。分社化、売却、撤退、縮小などの観測が相次ぐなか、事業部主導で説明会を積極的に展開している現状は“延命”に向けたパフォーマンスにも見えるようだ。ある主力取引行幹部は太陽電池の説明会について「なぜそういうこと(説明会)をするのか。太陽電池はやめなくてはいけないかもしれないのに、経営陣が事業部を掌握できていないのでは」と苦言を呈す。

 主力取引行の一角、三菱東京UFJ銀行の平野信行頭取は3月に行われた全国銀行協会の定例会見で、シャープへの資本支援についての質問に対し「一般論」と前置きした上で「ゾンビ企業を延命させる手段としてはならない」と述べ、再建可能性のない場合、厳しい判断を下す姿勢をみせている。

 再建へのシナリオを盛り込んだ新中期経営計画は5月までにまとめる。銀行側は当然、不振事業への売却や撤退などを含む抜本的な対応に加え、希望退職なども求めるとみられる。

 その直前の昨今の説明会と近く打ち出される計画の中身に齟齬がでることがあれば、シャープへの内外の信頼を失墜させることにもなりかねない。

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