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デジタルグリッド 電力制御ルーター 再生エネルギーを自在に融通

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デジタルグリッド 電力制御ルーター 再生エネルギーを自在に融通

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デジタルグリッドルーターの内部。インバーターとコンバーターを組み合わせ、電圧や周波数を変換する  太陽光発電などの再生可能エネルギーは、日々の需要に合わせた安定供給の難しさが課題だ。それを解決する電力制御機器を開発しているのは、東大発ベンチャーのデジタルグリッド(東京都文京区)。余剰電力を必要なところへ自在に融通する需給調整の仕組みを構築し、電力システムの進化を目指す一方、発展途上国に電力の恩恵をもたらすユニークな“量り売り事業”も展開している。

 アフリカ東部のタンザニア。コーヒー豆や淡水魚の輸出で経済発展が続くものの、電力普及率は最大の都市ダルエスサラームでも50%程度と低い。市内から車で1時間ほど離れれば照明を灯油ランプに頼る村が多く、欧米企業などが、中間所得層へ向け太陽光発電システムを盛んに売り込んでいる。そんな村のいくつかでデジタルグリッドは、昨年から「ソーラーキオスク事業」を始めた。

 ◆途上国で“量り売り”事業

 同事業は太陽光パネルと蓄電池、充電器をパッケージ化して雑貨店などのオーナーに貸し出し、住民が持ち込む電気製品の充電などに使ってもらうビジネスだ。料金は従量制で、LEDランプなら1回30円程度と一晩の灯油代より安い。ダルエスサラームの現地スタッフがインターネット経由で利用状況を管理し、売上金はオーナーのスマートフォンから電子マネーで集める。現在は隣国のケニアもふくめ十数カ所で営業、6月には100カ所へと増やす予定だ。現地のフランチャイズ企業を募って事業拡大し、3年後には黒字転換を見込む。「現地だけで継続できるビジネスモデルとして、サブサハラ各国(サハラ砂漠以南の国々)に広げていきたい」(陶山茂樹社長)という。

 同社は、電源開発(Jパワー)の技術部門から転じた阿部力也・東大特任教授を中心に2013年に創業した。阿部氏は、電力を制御するパワーエレクトロニクスとICT(情報通信技術)を融合させる「デジタルグリッド技術」を提唱。その一つの形がアフリカでの事業だが、日本では再生エネの安定利用を目指す。

 ◆生産者指定の購入も可能

 同社が開発した制御装置「デジタルグリッドルーター」は蓄電池と組み合わせて利用し、コンピューターで電力量や送電経路、送り先を指定することで、電力を自在に送り分ける仕組み。太陽光パネルは天候によって発電量が上下するのが弱みだが、ルーターを置いた建物同士で電力の過不足を補い合えば、太陽光導入のハードルを下げられる。

 今年度から環境省のプロジェクトに採用され、石川県七尾市の大手旅館で実証実験を始める。2棟の片方に太陽光発電と温泉熱発電、もう片方にバイオディーゼル発電設備を置き、ルーターと蓄電池を介した電力融通のノウハウをみがく。

 射程にあるのは、16年の電力小売り完全自由化。電力会社が再生エネを買い上げ一括送電する現行制度が変わり、一般家庭も電力会社を選べるようになる。

 ルーターはネットワーク上の“住所”に当たるIPアドレスを割り振り、通った電力量などを記録する仕組み。送電網の要所に整備すれば、建物間やコミュニティー内で電力を融通するだけでなく、「たとえば『北海道の地熱発電』というように、生産者を指定して電力購入することも可能」(陶山社長)という。

 途上国と日本などの先進国の次に狙うのは、送電網の整備が間に合わず、大規模停電のリスクが高まっている新興国。需給バランスを制御する日本発のデジタルグリッド技術を武器に、「誰もが自由に電力を利用できる未来」(同)を実現するのが目標という。(山沢義徳)

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