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シャープ「まだまだ大丈夫」は本当か? 社長の緊急メッセージに疑心暗鬼

ニュースカテゴリ:企業の電機

シャープ「まだまだ大丈夫」は本当か? 社長の緊急メッセージに疑心暗鬼

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シャープ本社=大阪市阿倍野区  再び経営危機に陥ったシャープの高橋興三社長の社内向けの言葉が明らかに変わった。「銀行支援がないと立ち行かない会社にはなっていない」「まだまだ大丈夫」。「環境は急激に悪化」「薄氷といえる状況」と危機感の共有を訴えた半年前とは対照的だ。不安の払拭が狙いなのは明らかだが、主力取引銀行と大筋合意した主力の液晶事業の分社化や希望退職、本社ビルの売却などへの言及が十分でないため、社内に響いていない。協議中の内容が多いため明確なメッセージを出せないもどかしさがのぞく。(松岡達郎)

 報道に惑わされないように…

 「あくまでシャープは自分たちの足で立って、自分たちの力でやっていく」

 3月20日夕、シャープ社内の音声放送で高橋社長の緊急メッセージが流れた。

 その前日、シャープが27年度中に3千人規模の希望退職を募る方針を伝えるニュースが駆け巡っていた。

 メッセージでは「報道にあまり惑わされないようお願いしたい」と訴えるとともに「銀行支援みたいな話がでてくるが、人(銀行)に頼るのではないということを確認しあいたい」と強調した。

 その上で、平成26年3月期連結決算で1千億円以上の営業利益を計上したことを強調し、「楽な状況ではないのは事実だが、決して支援がないと立ち行かないような会社に1年でなっているわけではない」「みんなで思い切り力を合わせてやっていけば、26年3月期の成績を超えることもできるんだと思う」と語りかけた。

 しかし、液晶事業の分社化や、他の事業の縮小・撤退や希望退職を含むとみられる中期経営計画については「時期がくればきっちりと説明させていただく」と述べるにとどめた。

 業務時間中のトップの緊急メッセージに社内に驚きは広がり、終戦を宣言する「玉音放送か」と陰口をたたく社員もいたという。

 変化

 一方、4月1日の入社式では、高橋社長は新入社員214人に対し「こういう状況になっているときにシャープに入ってくれて本当に感謝している」と述べるともに「2年合わせて9千億円超という過去の巨大な赤字に比べると、まだまだ大丈夫なところにいてる」と強調した。

 ただ、高橋社長は2月3日、27年3月期の連結業績予想で最終赤字に転落すると発表した会見では「前の経営危機ほどじゃないという感覚は我々にはない」と語っていた。

 さらに、業績が失速する前の昨秋には社内メッセージで「一部事業のわずかなほころびが全社に影響しかねない薄氷といえる状況」「危機を乗り越えたと思っている方がいたら直ちに考えを改めてください」とアピールしていたのと比べると、シャープが置かれた状況が明らかに変化したことを浮き彫りにしている。

 構造改革やリストラについて連日のように報道される状況では、社員に緊張感を持たすためムチを入れるより、社内が浮き足立つことを防ぐことが喫緊の課題となっているといえる。

 しかし額面通りに受け取る社員は多くなく、「自分たちの仕事がどうなるのか分からなくて不安に駆られる社員が多い」(関係者)のが実情という。

 苦渋にじむ言葉

 それでも注目度が高いだけに高橋社長も策定中の新中期経営改革について“沈黙”を守ることは許されない。4月9日に中国・深セン市で開かれた中国最大の電子情報産業の展示会「中国電子信息博覧会(CITE2015)」で、主力の液晶事業の分社化について、「方向性としてはどういうふうにしていきたい」と公の場で初めて認めた。

 その上で「ビジネスを細分化していかないと、スピード感がある経営ができない」と理由を語った。シャープ幹部によると、分社化はシミュレーションのひとつで、社内にとどめたまま分社化するのか、社外に切り出すかを検討しているという。

 そして4月16日には、国内で3千人規模の希望退職を募り、海外で2千~3千人の削減。本社の売却や社内カンパニー制の導入などに取り組み、液晶事業を分社化しやすくすることなどで主力取引行と大筋合意も報道されたが、直後にイントラネット(企業内通信ネットワーク)で「決定した事実はない」とするにとどめたという。

 液晶事業の分社化や社内カンパニー制の導入について、関係者は「努力して黒字化した事業と赤字のままの事業が一律に希望退職などのリストラ対象になることには社内の不満は強い。苦渋の決断だが、利益を出した部門は存続できるという納得性はある」と指摘する。

 2年で計9千億円以上の巨額赤字を計上した前回の経営危機では、平成24年に62年ぶりとなる希望退職を含むリストラを強いられたシャープ。そのわずか3年後に再び希望退職を含む構造改革を強いられる社内には抵抗感は強い。ただ、必達の公約だった中期経営計画が破綻し資本支援まで要請する現状で、主力取引銀行が納得する抜本的な構造改革を打ち出さなければ支援継続はおぼつかない。

 苦渋の決断を強いられた格好だが、新しい中期経営計画について「きっちり説明できる時期」になるまで高橋社長の言葉も苦渋に満ちたものになりそうだ。

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