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公営ガスの苦悩、競合相手とどう戦うか 迫る都市ガス小売り自由化
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ガス小売りの全面自由化への対応を急ぐ大津市企業局 平成28年春に迫った電力市場の開放に注目が集まるなか、翌29年をめどに実施される都市ガス小売りの全面自由化で、ひそかに注目されていることがある。自治体が運営する公営ガス事業だ。民間事業者と同じ土俵での競争を強いる全面自由化の時代に、都市ガス大手や電力大手を含む新たな競合相手とどう戦うか、苦悩を深めている。(内山智彦)
「使用量500立方メートル以上の顧客が他社に取られた場合の影響額は」
大津市企業局に4月に立ち上がったガス自由化対策準備室では、都市ガス小売りが全面自由化された際のシミュレーションが繰り返されている。
29年をめどに実施される都市ガス小売りの全面自由化で、ガス会社の地域独占は撤廃される。さまざまな事業者が参入し、市場を奪っていく可能性があるからだ。料金競争も激しくなると見込まれている。シミレーションは数パターンで、「どの顧客層への営業攻勢がありそうかという観点から取り組んでいる」と担当者。
全国の都市ガス事業者は200余り。そのうち公営ガスは1割超を占める。そのなかでも、大津市の顧客数は約10万世帯で、公営ガスとしては仙台市(約35万世帯)に次ぐ第2位の規模だ。
大都市のベッドタウンとして人口も増加基調にあることを受け、増収が続く優良事業者だ。利益率は大阪ガスなど都市ガス大手に引けを取らず、全国の都市ガス事業者のなかでトップクラスだ。
ただ、それだけに全面自由化後は、事業エリアが絶好の草刈り場となる可能性が高い。「関西電力が乗り出してくるかも」。大津市の関係者はこう懸念する。ガス小売りが部分的に自由化されて以降、関電はガス販売を強化。販売量は都市ガス大手3社に次ぐ規模になっている。
また、京阪神地区とガス導管がつながっている大津市には、兵庫などにLNG(液化天然ガス)基地を持つ関電にとってガス供給が容易。「大都市と近接しているがゆえに大津市は危機感が強い」(エネルギー業界関係者)。自由競争時代を勝ち抜く鍵は、アイディアあふれる多彩なサービスだ。いかにサービスを充実させるかが武器になる。
電気、ガス、通信のセット販売、割安な料金メニュー…。電力・ガスの市場改革では、これまでになかったサービスの登場が期待されている。参入各社は新たなサービスに知恵を絞っている。
ただ、公営ガス事業の場合は事情が変わってくる。料金、予算の変更には議会の承認が必要だ。「承認に数カ月かかる間に、民間企業はすぐに料金を値下げできる。不利な立場にある」(エネルギー業界関係者)。
このため仙台市ガス局は改めて民営化の検討を始めた。背景には公営企業では自由競争の条件をそろえにくい状況に置かれていることもありそうだ。
約10年前にも民営化の方針を表明。20年に事業を引き継ぐ企業を公募したが、応募した東京ガスなどのグループが21年1月に辞退し、頓挫した経緯がある。
さらに事業の多角化や市営のまま民間企業と組んで事業を強化する方策の検討も始めた。
電気、ガスのセット販売、インターネット通販などと提携し買い物に使えるポイントの導入などが検討課題だ。ただ、「法の規制などもあり、公営企業がセット販売など他の事業も一緒にやるのは難しい場合がある」(仙台市ガス局)という。
都市ガス大手幹部は「販売の自由化時代は、より機動性のある経営判断が求められる。公営企業と市場の自由化はマッチしない」と断言する。
電力・ガス小売りの全面自由化で開放されるといわれる10兆円市場といわれる。参入を目論む民間事業者にとって肥沃な大地が広がろうとしているが、公営ガスにとってはバラ色とはいえない状況が予想され、商機を取り込むためには克服すべき課題が残されている。