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【視点】爆買い外国人もターゲットか 伊勢丹に出現したアップルウオッチ専門店
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4月10日に伊勢丹新宿店1階にオープンした「アップルウオッチ」の専門売り場。店内でも一等地というロケーション=東京・新宿 何かと話題の「アップルウオッチ」。この4月の発売に合わせて、専門売り場が伊勢丹新宿店の本館1階に忽然(こつぜん)と姿を現した。オープン当初は入れない、試着できないと騒ぎになっていたが、さすがに5月の大型連休を過ぎると、普通の込み具合になっていた。好機とばかりに入り、試着しながら、ゆっくり間近に見て、触ってみた。
税別128万円からという最高価格の「同 エディション」は、まぎれもない高級腕時計の輝きを放つ。カバーが堅く特殊加工された18金で、表示面はサファイアで保護されている。でも素材や部品などがちょっとずつ違うとはいえ、標準型(税別6万6800円から)も決して見劣りしない。違いがないなら、壊す心配がないようにと、標準型であれこれ試してみた。
普通の腕時計として使うときの文字盤の動画・画像の多彩さ、マグネットによるサイズフリーのリストバンドなど、本来の時計メーカーが先に商品化すべき便利さだが、どこもやっていないから「さすがアップル」という話になる。
あれこれアプリが出てきて立ち上がったり、SNSのメッセージが入ってきて表示されたりと、忙しそうな腕時計である。ただし、電話機能は「アイフォーン(iPhone)」の子機のように使えるだけで、独立した携帯電話機能は備えてはいない。他にもアイフォーン所有が前提になっている機能があるので、アイフォーンユーザーでないと、価値は半減しそうだ。
あと、「18時間ごとに充電」という仕様はやはり致命的なわずらわしさだ。「触ったときだけ表示するようにすれば、もっと長持ちします」と販売員は説明するが、毎日は続きそうにない。だから自動巻きだ、ソーラーだと普及したのである。
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アップルウオッチの売り場に限らず、店内には外国人客が多い。最近は同店に行くたびに、外国人客が増えているような気がする。
広報担当者に聞いてみると、伊勢丹新宿店の2014年度の売上高における免税割合は6.7%。前年度は3.4%だったというから倍増の勢いだ。
しかもこの金額は基本的に免税対応の持ち帰り品だけの集計なので、飲食や非免税品を加えると、さらにこの数字は膨らむ。
さて、伊勢丹の外に出ても、外国人の姿が目立つ。斜め向かいには、家電量販店ビックカメラと衣料品店ユニクロの合体店舗「ビックロ」がある。家電売り場も衣料品売り場も、アジア系の外国人客に人気で、見たところ3人に1人は外国人と思われる時間帯もある。中国語の店内アナウンスもガンガンかかっていて、無国籍空間のようだ。
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歌舞伎町付近まで含めた新宿駅東口側には「ドン・キホーテ」や他のディスカウントストアもあり、「店ごとに使い分けて、街全体で買い回りする外国人の方が多いようです」(伊勢丹の広報担当者)と、エリアそのものの人気が上昇中だそうだ。
この地区にある旅行代理店HISの店舗はごく一般的な店構えだったが、先日から無国籍風のハワイ旅行専門店に衣替えした。こうした試みも、歩いている外国人が多いだけに、妙にマッチしている。秋葉原のように、街中あちこちに「人民元使えます」と書いてあるわけではないが、時間の問題かもしれない。
観光庁によると、今年1~3月期の訪日外国人数は前年同期比43.7%増の413万人。しかし消費額は64.4%増の7066億円と、人数を上回った。1人当たりの旅行支出は平均17万円に。
国別トップは中国人で30万円に達したという。家族単位でみると100万円を超えそうで、中には1人で100万円を超える人も珍しくないそうだ。
銀座、秋葉原とは異なるテイストにあふれた新宿駅東口地区は“爆買い”の中心地になりつつある。このエリア事情を読み切って、伊勢丹新宿店の中に、世界で3店だけというアップルウオッチ専門売り場を作ったのだとすると…。改めてアップル恐るべしである。
(SankeiBiz編集長・高原秀己)