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事件・不祥事
阪神阪急の食材偽装発覚で「うちにも来るぞ」慌てる厨房 名門リッツ大阪の“裏の顔”
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贅(ぜい)の限りを尽くした内装、超一流の接客サービス…。世界に名だたる「リッツブランド」への信頼が大きく揺らぐ事態に発展した。「絶対うちにも(影響が)来るぞ」。食材をめぐる阪急阪神ホテルズの不祥事が発覚した直後、ザ・リッツ・カールトン大阪の厨房(ちゅうぼう)ではこんなやりとりが従業員の間で交わされていた。従業員の証言から浮かび上がるのは、一流ホテルの「裏の顔」。企業の危機管理に詳しい専門家は「世界有数のホテルでもモラルハザードが起きていたとは」とあきれている。
「当店は生搾りのフレッシュでございます」
ストレートジュースを口にして違和感を覚え、「本当にフレッシュか」と問い合わせた客に対し、配膳(はいぜん)担当者は自信をもって、こう答えていたという。だが、実際は配膳担当者自らストレートジュースをグラスに注ぐこともあった。
なぜフレッシュジュースはストレートジュースに変わったのか。従業員は「上司は『原価を落とせ。コスト削減が第一』と至上命令のように話していた」と証言する。
実際“本物”は手間もコストもかかった。
1杯に使われるオレンジは2個程度。ジュース搾りを担当する新人のコックやアルバイト従業員の人件費だけでなく、大量の絞りかすの処理費用もかさんでいたとされる。
従業員は「ストレートジュースに切り替えられた一番の目的は、経費が半分以下で済むことだ」と語る。
同じグループの阪急阪神ホテルズ系列のレストランで、メニューと異なる食材が使われていた問題が報道されると、厨房の雰囲気は一気に慌ただしくなった。「箝口令(かんこうれい)が出るんじゃないか」。厨房周辺でこんな声も聞こえたという。
ホテルは当初、産経新聞の取材に「(問題発覚)以前から細心の注意を払っている」などとしていたが、実際は「フレッシュジュース」と記載されたメニューを公表前に修正していた。
日大法学部の福田充教授(44)=危機管理論=は「公表前にメニュー表記を直すのは、客や社会に対する背信行為。ミスがあったらただちに公表すべきだった」と指摘。「何とかごまかせるとでも考えたのではないか」とホテル側の姿勢を批判している。
従業員は「客から見えないところで、こそこそ隠蔽しようとする姿勢が腹立たしい。自分はこんなところで仕事をしていたのかと思った」と話した。