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公共図書館の「電子書籍」貸し出し 出版社、協力の動き

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公共図書館の「電子書籍」貸し出し 出版社、協力の動き

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電子書籍端末「コボタッチ」は月に約50件程度の貸し出しがあるという=香川県まんのう町のまんのう町立図書館 「競合」から「協業」へ

 欧米や韓国に比べ、デジタル化や電子書籍への対応が遅れているといわれる日本の公共図書館。だが、ここ数年電子書籍の貸し出しサービスを行う公共図書館が増えてきた。これまで「競合」してきた出版社の姿勢も変わりつつある。背景や現状、課題を探った。(戸谷真美)

 日本図書館協会によると、国内の公共図書館は3234館。このうち、電子書籍貸し出しサービスを実施するのは現在約20館だ。平成19年に公共図書館として初のサービスを開始した千代田区立図書館(東京都)に続き、地方にも電子化の動きが広がりつつある。同協会でも近く、電子図書館サービスのためのガイドラインを策定、公表する予定だ。

コボタッチを100台

 今年6月にオープンしたまんのう町立図書館(香川県まんのう町)は、楽天の協力で電子書籍用端末「kobo Touch(コボタッチ)」を100台導入。夏目漱石や太宰治、宮沢賢治の小説などを収納し、町民に貸し出している。今年10月からはiPad12台も追加して、ビジネス書100タイトルの提供も始めた。

 同館を運営するリブネット(三重県伊勢市)企画営業課長、永野智基さんは「今は電子書籍に慣れてもらう段階。子供は習熟が早いので、おじいちゃん、おばあちゃんに教えてあげるといった形で地域の交流ツールになれば」と話す。情報端末に不慣れな人の操作を考え、コボタッチはIDやパスワードの入力なしで読めるよう、あらかじめ作品を入れたうえで貸し出しているという。

 一方、千代田区立図書館は、利用者が自分のパソコンやタブレット端末などに電子書籍データをダウンロードして閲覧する方式。現在約6千タイトルを提供しており、語学本やビジネス書、実用書が充実している。聞き取り練習もできるTOEIC対策本や、3D画像や音声が視聴できる図鑑など、電子ならではの利点を生かしたものが人気で、iPadへの対応も始まった。同館広報チーフの坂巻睦さんは「館内講習会などで少しずつ浸透している。文字を大きくしたり白黒の反転ができるので、普通の本を読みにくい高齢者や弱視の方にも親しんでもらえる」と話す。

読める本が少ない

 電子書籍は、外出しにくい障害者など図書館や本へのアクセスが難しい人に可能性を開く一方、本の劣化がなく収納スペースも不要であることなど図書館側にもメリットがある。にもかかわらず普及の大きな壁になっているのが、電子版で読める本の少なさだ。約60社から電子書籍の提供を受ける千代田区立図書館でも、収集基準に照らして導入できるものはかなり少ないという。

 同協会のガイドライン策定に携わる湯浅俊彦・立命館大教授は「出版業界が以前、ベストセラー本を複数購入する公共図書館を『無料貸本屋』と批判した経緯が背景にある。図書館の貸し出しが書店で売られる本を上回る状況で、出版社は販売への影響を考慮して図書館への協力に消極的にならざるを得なかった」と指摘する。

 こうした中、電子書籍導入を後押しする動きも始まっている。今年10月には、講談社など3社が公共図書館向けサービスを行う新会社を設立。大日本印刷や丸善など4社も共同で、「クラウド型電子図書館サービス」を来春から開始すると発表した。

 湯浅教授は「大切なのは、出版社と図書館が共同して著作がより利用されやすい環境をつくること。また大規模なデジタル化や新たな電子資料の収集は国立国会図書館、それ以外は出版社などがサービスを提供するといったすみ分けを協議する時期に来ている」と話している。

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