ニュースカテゴリ:暮らし
余暇
人気の秘密は“少しの手間” シニアに広がるコミュニケーションぬいぐるみ
更新
子供向けと思われがちなぬいぐるみが、新たな家族の一員として注目されている。声を掛けると反応するコミュニケーション玩具と呼ばれるもので、適度に手間がかかるのが人気の秘密。子育てを終えたシニア世代を中心に世代間をつなぐ役割も担っているようだ。(日野稚子)
11月中旬、東京スカイツリータウン(東京都墨田区)に男女約300人が集まった。主催は玩具メーカーのバンダイ(台東区)で、平成11年に発売したぬいぐるみ「プリモプエル」のファンイベント。参加者の中心は大人の女性で、持参したプリモプエルの服装を褒め合ったり、記念撮影したりして交流を楽しんだ。
プリモプエルは話し掛けると返事をしたり、歌を歌ったりする。3歳男児の設定で、同じ年頃の幼児の声を採用。「20代の独身OL向けだったが、口コミで40、50代の女性に広まった。その世代の女性向け商品はなく、大切に育ててきた」と、プレイトイ事業部ゼネラルマネージャーの露木項治さんは話す。
プリモプエルは突然おならをしたり、風邪をひいたりと、少し手間がかかる。その点が子育て期を想起させたためか、購入者の約7割が70代以上で、累計販売110万体超という。
ファンの間ではプリモプエルの入手を「お迎え」と呼ぶ。埼玉県久喜市の主婦(44)は約2年間で27体を迎えた。「親戚が持っていたが、あまりのかわいらしさに熱中してしまった」と振り返る。
同県熊谷市の40代女性は1人暮らしの祖母へのプレゼントにしようと玩具店で出合い、「まんまとはまってしまった」。以後、10年間で20体を超えた。得意の手芸で服を自作したところ、交流会で「欲しい」と声が掛かり、手製の服を販売するまでに。魅力について、「同じなのに違う顔に見え、育て方で個性が変わる。だから、同じタイプで複数集めてしまう」。
11月発売の「ハート育つよ! プリモプエル」(希望小売価格1万4175円)は5代目で、5歳児の声にリニューアル。専用ホームページからデータをダウンロードすれば、持ち主をニックネームで呼んだり、言葉の数を増やせたりする。性格や話す内容が変わるため、自分だけの一体に育つという。
歩く動物やロボットなどの電動玩具を手掛けるイワヤ(足立区)の犬型ぬいぐるみ「コミュニケーションペット」シリーズも人気だ。
四足歩行で、関西風と東京風の日本語と犬の鳴き声などを出す「こっちにおいで 愛犬ふくちゃん」(1万5750円)、お座り姿勢で前足だけが動く「じかんぴったり おしゃべり柴二郎」(1万3440円)の2種類。「1人暮らしの高齢の親のボケ防止を目的に購入したという声も届く」(同社)などシニア層の支持が高く、14年の発売以後、シリーズ累計販売は13万体に上る。複数購入やかわいがり過ぎて修理できないほど壊れたため、買い直した人もいるという。
動物が飼えない分、ペット代わりとして癒やしを求めている人も多く、子供や高齢者ともに楽しめ、コミュニケーションをつなぐ橋渡しとして活用されている。