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ふるさとへの思い、小口資金で 地方自治体に広がるクラウドファンディング
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神奈川県鎌倉市がクラウドファンディングを活用して設置する観光ルート案内板。必要だが予算手当がつかなかった8カ所に設置する(同市提供) インターネットで小口資金を募るクラウドファンディング。これまで民間団体や個人が資金を集めてきたが、自治体による活用例も登場し始めた。手軽に行える社会貢献の仕組みとして今後も広がりそうだ。(日野稚子)
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◆ルート板に自分の名
クラウドファンディングは、団体や個人などの企画立案者がプロジェクトを仲介サイトに公開し、必要な資金を不特定多数の賛同者から小口出資で募る。資金は目標額を設定、募集期間内に目標額に達すれば、企画立案者が資金を得ることができるのが一般的。出資方法はクレジットカードでの決済が多い。カード会社への手数料と仲介サイト使用料を合わせ、仲介サイト側が調達資金の15~25%程度を、残りを企画立案者が受け取っている。
小口資金の出資者に対する対価の有無などで仲介サイトの色合いが変わる。出資者は対価を得ない「寄付型」▽出資金を製作資金として活用し、完成品を提供する「購入型」▽出資比率に応じて事業配当を受ける「投資型」▽仲介サイト運営者が貸し付けを実施し、出資者は金利を得る「貸付型」-に分けられる。
自治体も活用し始めた。神奈川県鎌倉市は昨年11月、「かまくら想いプロジェクト」を立ち上げ、団体が寄付金を集めることを目的としたジャスト・ギビング・ジャパン(東京都千代田区)を通じて寄付を募った。出資金は市内観光スポットを案内する観光ルート板(8カ所10基分)の設置費用として、100万円を1口1万円に分割。寄付者の名前を銘板に刻み、ルート板に取り付けることにした結果、100人の寄付者を22日間で集めた。
観光施設整備の財源確保が難しい中、「今回のように目的が明確な小口寄付は参加しやすく、また、クラウドファンディングは時代にあった寄付の集め方かもしれない」と、同市商工観光課の江口達也課長補佐。来年度も案内板やトイレなどの観光施設などでの活用を検討中だ。
◆共感できるものを
民間団体への資金調達支援策に仲介サイトを誘致したのが島根県だ。出身地から離れて暮らす人と出身地をつなごうと、県別にプロジェクトを掲載する仲介サイト「ファーボ」に着目。運営するサーチフィールド(東京都渋谷区)へ働き掛け、「ファーボ島根」を昨年9月、誕生させた。通常は仲介サイトが行うプロジェクト審査を県が実施、PR策などを支援するアドバイザーの派遣も行い、資金募集をかけた3件全てが成立に至った。
「東京在住の島根出身者から地元支援をしたいが関わり方が難しいと言われていた。こうしたニーズを受け止められる仕組み」と、県しまね暮らし推進課の田中徹さんは話す。県内の団体からの企画応募も増え、他自治体からの問い合わせも相次ぐ。
県別ファーボは13府県版が運営中で、大阪や北海道など5道府県でも開設準備が進む。サーチフィールドの斎藤隆太取締役は「出資金を活用してものづくりを行い、出資者に商品を届ける予約販売の意味合いが強いサイトと、寄付・支援が強いものに分かれ始めている。出資する場合、仲介サイトの位置づけを確認したうえで共感できるものを選択するのがいいのでは」と話している。
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■ネット利用の社会貢献 活動参加に58%が関心
NTTレゾナント(東京都港区)が20~60代の男女1050人を対象に昨年11月、実施した意識調査によると、「インターネット上で行える社会貢献活動に参加したい」人は58%に上った。
最も関心のある社会貢献活動は「簡単なアクションで参加できる」ものが1位(34.1%)で、「インターネットを利用することで寄付できる」(22.9%)、「インターネット上の社会貢献活動の見える化」(16.2%)が続いた。場所や時間に縛られることなく、手軽に実行できるものが求められているようだ。