SankeiBiz for mobile

不器用だけど魅力的 主演・松たか子「もっと泣いてよフラッパー」

ニュースカテゴリ:暮らしの余暇

不器用だけど魅力的 主演・松たか子「もっと泣いてよフラッパー」

更新

おしゃれなフラッパーたちの衣装も見どころ。着替えも6回ほどあり「大変だけれど楽しい」と話す松たか子(寺河内美奈撮影)  開場25周年を迎えたBunkamuraシアターコクーン(東京都渋谷区)で22年ぶりに上演されている音楽劇「もっと泣いてよフラッパー」。主演の松たか子(36)は中学生だった24年前、「なぜ、もっと泣いてよ、なの? フラッパーってなんのこと?」と想像を巡らせながら見入ったという。「なんだか分からないけれど、ワクワクしたり、切なく思う瞬間があったり。芝居のこんなところが好きなんだよなあって、教えてくれた舞台でした」と振り返る。(津川綾子)

 シアターコクーンの初代芸術監督を務めた串田和美(71)が昭和52年に書いて初演した同作は、人々が夢に浮かれて生きた1920年代の米シカゴの享楽的な空気感を描き、平成4年までにスピンオフの「銀色の陰謀編」を含み6度上演を重ねた人気作だ。

 松が「何だろう」と思ったフラッパーとは、スコット・フィッツジェラルドの小説に出てくるような、20年代に米で最先端だった女性たち。ショートヘアでたばこを吹かし、窮屈なコルセットや旧式の慣習から自らを解放し、自由を謳歌(おうか)した。松が演じる踊り子ジルは、そんなフラッパーの一人だ。スターを夢見て田舎町から“まずまず都会”のシカゴにやってきた。

 「本当はニューヨークに行きたいのかも。すごいダンサーだと自負するのに、実際はチョイ役で、でもいいのよ、と一生懸命踊ります。はたから見れば、あれ? と思うような、夢見る人の滑稽さや、どこかちぐはぐな姿が、魅力的に見えればいいなと思います」

 ジルを取り巻く面々は、街にのさばるギャングたち(松尾スズキ、串田ら)や、いかさまボクサー(大東駿介)とひと癖ある面々。華やかに舞う踊り子も、女狐よろしく男に貢がせる者もいれば、逆に貢ぎだまされる者もいる。やがて、それぞれ恋や夢に目覚め、破れて、それでも「まあ、いいか」とたくましく人生を歩んでいく。

 「いい意味で人々がいいかげんに生きた時代の、にぎやかだけれど、何となく切ない瞬間が訪れるような…ちょっと懐かしい空気を表現できたら」

 人間模様を味わい深く描く串田作品の稽古場では、演劇的な常識にとらわれず、これまでの経験や見てきたものなど丸ごと試されるような感じがある。共演者たちが試行錯誤する姿にも刺激を受け、「今はいろいろ試してみよう、いろいろ失敗してみようってパワーをもらっています」「うまくやろうという欲は捨てて…」と話す横顔が、不器用だけれど輝くフラッパーたちに重なる。

 生バンドによる約30曲が全編を彩り、大東や串田、新聞記者役の石丸幹二ら俳優も劇中のバンド「オーケストラ“ラ・リベルテ”」で管楽器を鳴らす。バンドを率いる音楽監督は、松の夫、佐橋佳幸とDr.kyOnのユニット「ダージリン」。舞台では夫婦初共演だ。

 「稽古段階を見られるのはとても複雑でしたが、お互いやることだらけで、大変忙しいので」と笑顔をみせた。

 ■3月2日まで。問い合わせはBunkamura(電)03・3477・3244。長野、大阪公演あり。

ランキング