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戸田恵子「いつも以上に胸キュン」 アンパンマン新作、5日全国公開
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「アンパンマンのやさしさがとてもよく伝わる作品です」と話す戸田恵子(大里直也撮影) ふるさとの再建をテーマにしたアニメ「それいけ!アンパンマン りんごぼうやとみんなの願い」が5日、全国公開される。昨年10月に亡くなったやなせたかしさんの最後の絵本を基にしており、アンパンマンの声を担当する戸田恵子(56)は「原点回帰の作品。いつも以上に胸がキュンとします」と話している。(櫛田寿宏)
アンパンマンの映画は26作目。東日本大震災をきっかけに始まった復興3部作のフィナーレを飾る作品だ。舞台は、おいしいリンゴがたくさん収穫されるアップルランド。そんな理想郷はある日、毒リンゴによって汚染されてしまう。りんごぼうや(声・井上真央)は、アップルランドの再建のために世界一のリンゴの実をつける“魔法のたね”を探す旅に出て、アンパンマンと出会う。
アンパンマンが本当の強さとはどういうものか、りんごぼうやにていねいに教えるシーンがある。戸田は「弱っている人、困っている人を助けることに喜びを感じる、それこそがアンパンマンの強さです。アンパンマンの世界観、やなせ先生の世界観を改めて教えてくれる作品です」と話す。
アンパンマンの声をライフワークと位置づける戸田だが、やなせさんが亡くなった後は大きな喪失感を味わい、「道しるべを失ったと感じた」という。心に穴が開いたような日々を過ごしていたある日、仙台にあるアンパンマンこどもミュージアムを訪れ、考えが変わった。「子供たちは大人の事情なんて関係なく、アンパンマンの着ぐるみと無心に遊んでいました。アンパンマンは誰かのものではなく、子供たちみんなのものなんですね」
ずっとアンパンマンの声を担当してきて、「すてきだな」と感じることがある。例えば、お金の話が一切出てこない点。「今回のお話も、いいリンゴを作ろう、ふるさとを再建しようという純粋な動機から始まっています。利益だとか損得だとか、生々しい話はありません」。アンパンマンのあんこには「勇気の花のジュース」が練り込んであるなど細かな設定があり、なかなか奥深い。食パンマンやカレーパンマンは物を食べるシーンがあるが、「アンパンマンは決して食べません。『おいしかった』というせりふは一度もありません。唯一無二の不思議な存在なんです」。
26年続いているテレビ収録は、毎週月曜日の午前中。「私を含め、声優チームにだってうれしいこともあれば悲しいこともあります。そんな中、体調を管理しながらよくやってきたなと思います」と笑う。
アンパンマンに夢中になった子供たちは、いずれ“卒業”してゆく。
「大人になったとき、何かが残っていてストンと腑に落ちる。そういう物語ではないでしょうか」