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3DCGで表現される「萌え」や「色気」 アニメ「蒼き鋼のアルペジオ」
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昨年10月にTVアニメ「サザエさん」がデジタル制作に切りかわった。これで国産商業アニメで、セルとフィルムで制作されるアニメはなくなったはずだ。昔からなじんできたセルアニメがなくなったのだ。寂しさを感じずにはいられない。昨年の10月にはもう一つ、アニメの変化を感じさせられる作品があった。ほぼ全編を3DCGで制作したTVアニメ「蒼(あお)き鋼(はがね)のアルペジオ-アルス・ノヴァ-」である。これを見て「3DCGもここまできたか」と思った。
もはや、国産アニメも3DCG抜きで語ることはできない。「蒼き鋼のアルペジオ」のような3DCG主体の作品も存在するし、手描き主体の作品でも見応えのある映像を作ろうとした場合、3DCGを併用するのが珍しくない。
例えば、「宇宙戦艦ヤマト」をリメークした「宇宙戦艦ヤマト2199」(平成25年放送)。この作品では人間のキャラクターは手描きだったが、ヤマトそのものは3DCGで表現されていた。昔から「ヤマト」を見てきたファンとしては「ヤマトはあのディテールの塊の宇宙戦艦を、手描きで頑張って動かすところがいいんだよ」と言いたいところだが、3DCGで細部まで作り込まれたヤマトがきれいに動くのを見ると「これはこれでよいなあ」と思わざるを得ない。
現在放映中の女児向けアニメ「アイカツ!」と「プリティーリズム・レインボーライブ」では、日常シーンは手描きで、主人公たちが歌って踊る場面は3DCGだ。手描きキャラクターと3DCGキャラクターの違和感は少ないし、歌って踊る場面はよく動いており、見た目もきらびやかだ。手描きと3DCGが混在する作品で、3DCGのキャラクターが見どころになるなんて10年前には考えられなかったことだ。
だが、3DCGも万能ではない。メカニックや歌って踊るような描写は得意だが、キャラクターの繊細な感情表現や日常芝居は苦手なのだ。しかし、いつかそれも克服されるのではないかと「蒼き-」は思わせてくれた。これは軍艦同士が戦闘を繰り広げるSFアクションものだ。メカ描写は迫力があり、見応えたっぷり。いや、それよりもキャラクターだ。この作品にはメンタルモデルと呼ばれる美少女が何人も登場し、それがセールスポイントになっている。彼女たちは半ばロボットのような存在なのだが、その個性が3DCGの持ち味とマッチし、魅力的なキャラクターとなった。3DCGであるにもかかわらず、いわゆる“萌え”や色気が表現されていた。彼女たちに関しては、手描きで表現するよりも魅力的ではないかと思ったくらいだ。
人間のキャラクターの描写についてはまだ硬いところがあるのだが、この作品が3DCGアニメにとって大きな一歩であるのは間違いない。このまま3DCGが進歩し続ければ、どこが手描きでどこが3DCGなのか、見分けがつかなくなる日がくることだろう。
おぐろ ゆういちろう 昭和39年、埼玉県生まれ。雑誌「アニメスタイル」とウェブサイト「WEBアニメスタイル」編集長。月刊誌「アニメージュ」で「この人に話を聞きたい」を連載中。アニメ作品の企画・脚本・広報など「アニメのことなら何でもやる」がモットー。