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【早坂礼子の経済ウォッチング】浅草の土産物店にグローバル化の萌芽
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東南アジアからの観光客に囲まれた「ひらい」の店頭 東京都内で1、2位を争う観光名所の浅草寺。気持ちよく晴れた10月中旬の昼下がり、裏通りに大型観光バスが止まると、外国人観光客が続々と吐き出されてくる。
小旗を掲げたガイドのフランス語による説明に聞き入るグループの傍らには、着物姿の日本人を囲んで記念撮影に興じる人たちがいる。種々雑多な人種でごった返す境内には不思議な熱気が充満していた。
彼らを待ち受けるのは“トーキョー土産物店”だ。玩具や菓子、小物を売る門前の仲見世商店街をはじめ、脇道にも外国人客目当ての店がずらりと並んでいる。
人波が絶えないデジタルカメラなどを扱う免税店の隣に「MARNA(マーナ)」があった。東駒形(東京都墨田区)に本社を構える家庭用品の総合メーカーが2009年に出店した傘専門の小売店だ。
「お客のほとんどが外国人。タイが3割、中国が2割、残りがそれ以外の東南アジア各国の人です」と店の井上裕之マネジャー。
売れ筋ナンバーワンは、紫外線を遮るUVカット機能の付いた布地を使った折りたたみ傘だ。1本2000円と値は張るが「強い日差しを遮るし、スコールの時にも役立つ」とタイ人に圧倒的人気だ。二番手は柄の部分がかわいらしい動物の頭の形をした「アニマル傘」700円。安価で「カワイイ」からだろう。
店内の傘はほとんどが中国製で、それを中国人らが喜々として買っていく。「いまの日本で中国製じゃない傘を探すのは難しい。聞かれればちゃんと説明します。けど、デザインはメード・イン・ジャパンですからね」。
仲見世から1本横道に入った古びた2階建ての和風家屋も外国人観光客で賑わっていた。
店頭に和風の小間物が並び、見上げれば「染と織 ひらい」と描かれた木製の看板。もとは染め物や小物なども扱う着物店だったが、体調を崩した父の跡を継いだ平井剛さんが品ぞろえを変えたという。
この店の一番人気は3枚980円の和柄ハンカチ。カラフルな鼻緒が付いたげた1000円も「日本にしかない」と売れている。やりとりは中国語や英語だ。「欧米からのお客さんは自分用にじっくり気に入ったものを選ぶが、中国や東南アジアの方は家族や友人に配るのでしょうね。一度に5000円ほど使う人もいますよ」。
表通りに面した青果店では、ピカピカに磨き上げられた柿のカゴ盛りに「Don’t touch、請勿摸商品、触らないで!」と英語、中国語、日本語の3カ国が並んだ手書きの注意書きが付いていた。「ベタベタ触られると痛んで商売にならないからさ。外国人だけじゃないよ。日本人も触る。不公平だから日本語以外の言葉でも書いたの」と店主はこともなげに話した。
これまで外国に縁がなかった人でも、商売に直結すれば嫌でも外国語を使うようになる。日本人客と違うニーズを知れば自然と視野が広がり、海外の文化や国民性に対する理解が深まる。その積み重ねはいつか日本の安全保障や世界の安定につながるのではないか。
グローバル化とは日本人が海外に出ていくことだけではない。浅草周辺の土産物店にはその兆しが芽生えつつあるようだ。